2-5-3.語形変化

📖この節では、次の項目について説明する。

  【けいどう】⛏

  【そくおんそうにゅう】⛏

  【そくおんつい】⛏

  【りゃく

  【せんもんよう

   🖈専門用語はみだりに遣うべきでなくってよ

   🖈よく知られた専門用語の本当の意味をお教えしますわ



      †



📕【けいどう】⛏

 〈一連の決まったことばを単一の語に集約させる語形変化〉の意。

 〝まつごとまつりごと〟〝おもはかる→おもんぱかる〟〝bathバス roomルームbathroomバスルーム〟などがこれ。


 飽くまで同一の語が変化したものであり、〈同じ意味になる別語〉である「どう」とは異なる。



      †



📕【そくおんそうにゅう】⛏

 〈主にたい的な形容動詞ないし感嘆詞を強調する目的でその途中に促音がそうにゅうされる語形変化〉の意。

 〝しかり→しっかり〟〝バタバタ→バッタバッタ〟などがこれ。


 なお「促音」は要するに〔っ〕の事であり、一音ぶんの時間を空けることで調子を変えるもの。


 ところでどうも、〝{しかり}という読みは間違いで{しっかり}が正しい〟などと断言している例がみられるのが、そんなルールはどこにも無いぞ。

 というか、語の定義には「適切さ」という概念はあっても「正しさ」というそれなど無いので、この言葉を出してきている時点でもうお察しとしていいかもしれない。



      †



📕【そくおんつい】⛏

 〈主におん語ないし文節を強調する目的でその末尾に促音が追加される語形変化〉の意。

 〝バタバタ→バタバタッ〟〝ここまで美味うまい必要があるのかっ、反省しろォっ!〟などがこれ。


 そろそろ寿司を食わないと(



      †



📕【りゃく

 〈簡便に使う目的でことばの要素をいくらか省く語形変化〉の意。

 〝けいせいさいみんけいざい〟〝Intelligenceインテリジェンス QuotientクオシェントIQアイキュー〟などがこれ。



      †



📕【せんもんよう

 〈専門分野におけるしょうを簡便に表現するための語〉の意。

 〝かくしんはんほうそう専門用語)〟〝やくそく(演劇専門用語)〟〝おあいそ(接客専門用語)〟〝アレルギー(医学専門用語)〟などがこれ。


   📍専門用語はみだりに遣うべきでなくってよ


 専門用語とは一般に、〝その分野内においてのみ通じればよろしい〟との意図で作成されるものですわ。

 したがって、最低限必要な情報までもが削ぎ落とされた「略語」の形となりまして、きちんと確認をしませんとその意味が察せられないのが普通でございますの。


 また、何らかの専門家が「言語に対してはさほどたんのうでない」場合もおおうございますわ。

 そのせいで、しばしば不適切な語の組み立てがされてしまっておりますの。

 なぜかそこには、のよ。

 たとえば「形容動詞」という何ひとつ動詞的でない品詞、基本としては名詞的品詞ですのになぜこのように命名されたのでしょうね。

 動詞的な名詞が動名詞であるならば、形容詞的な名詞は「形容名詞」でございましょう。


 いずれにせよ、無理にこれらを分野外で通用させますと、激しい誤解を招くのでございます。

 その結果、どのような意味に受け取られるかを、発言のたびにいちいち考慮しなくてはならないという、非常にわづらわしい事態を招いておりますの。

 つまり、専門用語をむやみに遣うのはいきどころかむしろ無粋なのであり、よって専門分野外においては、専門用語にはかつに関わらないほうが賢明と存じますの。

 そも、専門用語に寄りかかるのは見下げた権威主義というものでございましょうし、いきさを演出したいなら「修辞」でも覚えたらよろしいのでなくって?

 次節〖2-5-4.語の効果操作〗でさらりと触れますわよ。


   📍よく知られた専門用語の本当の意味をお教えしますわ


 「かくしんはん」は、〈正義と確信して実行する勇敢な犯行〉の意でございますの。

 一方、〈悪いと確信しながら、知らぬふりで実行する〉ことを、私たちは「故意」と呼ぶものでございましょう。

 ですから、そのような犯行のことは素直に「はん」と言えばよろしいのです。


 また、「やくそく」は〈役柄の詰まらなさが役者の魅力を台無しにすること〉の意で、シナリオやさいはいの是非を批評するものですわ。

 つまり〈自分には不相応な大役〉のような意味ではなく、〈力及ばない〉と言いたいなら素直に「力不足」と言えばよろしいのです。


 ほか「おあいそ」は〝京都のアレ〟、つまり〈かどを立てない態度を保ちつつもやや強引にお引き取り願う〉の意で、〈お会計〉の事ではございませんのよ。

 これに〝「会計時にはあいを忘れずに」という意味だ〟と反論してしまいますと、会計時以外にはあいを忘れてよろしい事になってしまうでしょう。

 同時に、あいの必要なすべての接客業務が「おあいそ」と呼ばれるべき、という話にもなりますわね。

 これも素直に「お会計」と言えばよろしいのです。


 そして「allergyアレルギー」は、直訳すれば「どうへん」となりますの。

 説明するなら〈誤作動(=動作するべきでない時に動作してしまうこと)を起こすようになること〉でございますわ。

 つまり誤作動そのものを、指すわけではございませんの。

 実際、アレルギーによって起こる誤作動は「アレルギー反応」と呼ばれ、アレルギーそのものとは区別されますわ。

 カタカナ語ではなく、ちゃんと漢字の名称で通用させていれば、〈じょう反応(=ある事に対する反応の度合いが支障の出るくらいに激しいこと)〉を指したり、水が酸のように直接はだを侵す「みずじんしん」を〝水アレルギー〟と呼んだりするような、激しい誤解を招くことはなかったことでしょう。

 名称は大事でございますし、ここは日本ですもの。

 そも、「アレルギー」「水じんしん」はわ。

 気分的なじょう反応についても、「すごくいやがる」「おぞましく感じる」「げっこうしてわめく」のように説明付けをしたほうが、表現としてより豊かでございましょう。


 ほら、いかが?

 ちゃんと確認しないと、意味が察せられないことばばかりでございましたでしょう?

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