ひきこもり美少女ですが、Vtuberになりました ‐天才コミュ障のVtuber生活 百合の砂糖漬けを添えて‐

紅坂澪

Live-Live3期生、デビュー決定!(お酒って怖いね)

私、星巡 藍という人間は、昔から孤独だった。

私は俗に言う天才という人種だ。無駄に突出した知能を持ち、そして無駄に上流階級の家に生まれたが故、周りから浮いてしまう存在。それが私のような天才。

その才能や家柄を妬まれて孤立し、やがてはいじめの対象となった。

だが、私は天才だった。いじめられるのであれば、学校に行かず勉強することだってできたし、なんなら教科書を一通り読めば頭に入ってくる、そんな人間が私だった。

とはいえ、それが将来の成長にいいかと言うと…………

悪かったんだな、それが。

親族以外の人間と関わらなくなった私は気づけば引きこもりになっていた。

何とか大学に入り、なんとか進級して就職活動を、というところで私の唯一(?)にして最大の弱点が露呈した。

私は知らないうちに、重度のコミュ障を患っていたのだ!

原因はわかる。小学校から大学までほとんど家から出なかったせいだ。当たり前の結果だろう。

就活で面接に行っては言葉が出ずそして落ちる日々。


そんなのを繰り返していたら20歳を過ぎ、どうせなら酒でもと適当に買ってきた缶チューハイを飲んでみた。

一口目はとても…………どうしてこんなものを、と思うほど不味かった。

けれど半分くらいを飲んだところで美味しくなってきて…………結局1本飲んでしまった。

――ハマってしまった私は翌日、翌々日と毎日のように飲んでいた。

そんなある日。今から一か月半くらい前か。

飲めるだけ飲んでやろうと思った日があった。……訂正、思ってしまった日があった。

もちろんそんなことをすればべろんべろんに酔っぱらって結局5,6本飲んでいた。しかもでかい500mlの方。今思えば馬鹿だったと心から思う。

そしてその日、天才なはずの私はとんでもないやらかしをした。

大手Vtuber事務所、『Live-Live』に応募していたのだ!

数日後、私に届いた一次選考通過のメールを見て私は宇宙猫になりかけたが朧気すぎて消え去りかけていた記憶の残滓から、『応募したような気がする』と思い出し、焦った。だがすぐにその焦りは落ち着き、『いやー、まぁ一次通過したとはいえ、オーディションあるだろうから落ちるな!』と安心し、そのオーディションを気楽に受けた。でも気楽とコミュ障って関係なくてうまくしゃべれないんだけど。

そんなんだからどうせ落ちたなー、と今まで以上サバサバして帰ったそれまた数日後…………

私の家の郵便受けに投函されていたのは合格通知書であった。

叫ぶとか、驚くとか、そんな次元じゃない何かを感じたよ、言葉にできないなにか、とりあえず驚きの最上級と形容しておこう。

その数分後、私は謎の自信に満ち溢れていた。手に職を付けられるということややっともらった合格、そして今を輝くVtuber事務所への所属決定…………

そう、私はまさしく超天才なのだ!と、ナルシシズムに満ち溢れた自信。今なら何でもできる気がしたから、バク宙をしようとしたら背中から地面に落ちた。

引きこもりの害その2、運動能力の低下を目の当たりにした。


それから一か月ほど経ち、打ち合わせ、そして同期との顔合わせとして、Live-Live本社に呼び出されたのが今日である。

馬鹿みたいに緊張しながら電車に乗り、会社へ向かう。

本社前で、大きく深呼吸をして心を落ち着けたら、決戦の地へいざ逝かんと気合を入れたのが現在だ。


ガラス張りのドアを開き、中へ歩みを進める。

そして出くわしたのは――

「ご用件は」

うけつけのおねえさんが あらわれた!

「ア、エト、ソノ。ラ、Live-Liveの、サ、シャ、三期生打ち合わせで、来た、ソノ、アノ、星巡藍デス」

「星巡さんですね……はい、確認取れました。メールでも説明されていると思いますが、三階のB会議室ですね」

「ア、ハイ、アリガトウゴザイマス」

あいは おねえさんを たおした!

第一関門を突破。経験値2000くらい入ったと思う。レベルは上がらなかった。


エレベーターを呼び、三階へ上がり、会議室を探す。

きょろきょろと周りを見ながら、挙動不審に歩いていると声をかけられた。

「星巡さん……ですよね?」

「エ!?ア?!ひゃい!?」

びっくりして飛び上がってしまう。心臓に悪いからやめてください。

そこに立っていたのは女の人。あ、面接のときこの人いた気がする。

「よかった。遅いからどうしたんだろうと思って探そうと思って、来てるかロビーに聞いたら来てるって言ってて…………社内で迷ってるとは思いませんでしたよ」

「ア、ハイ、スミマセン」

「まぁ大丈夫ですよ、こっちです」

歩いていくのでついていく。

エレベーターからすぐ近くに、B会議室はあった。噓でしょ…………

「どうぞ」

扉を開けてくれたので中に入ると、2人の女の人と1人の男の人がいた。

「では全員集まったので、始めようと思います。えーと、自己紹介していきましょうか。私は秦 美樹です。えーと、Live-Live3期生全員……皆さんのマネージャーになります。よろしくお願いします。えーじゃあ次…………先のがいいですよね、星巡さん」

ドッキリ女性改め美樹さんが私に振ってくる。やっぱりドッキリ女性でした。謹んで訂正いたします。

「ふぇっ?私ですか!?」

「はい!よろしくお願いしますね」

…………ええい。思い切ってやってみればレベルが上がるかもしれない!やってみせろよ星巡!何とでもなるはずだ!

「ホッ…星巡藍です!よろしくお願いします!」

「藍ちゃんだねー!よっろしくー!」

「きゃっ!?」

抱きついてくる茶髪の女性……というか、美少女。

「すんすん、いい匂いだねー、可愛いし!」

「あの……近い、です……」

私の匂いを嗅いでくる美少女ちゃん。さすがに近いから離れて欲しいんだけど……

「星巡さん、よろしくお願いしますね」

続いて挨拶してきたのは黒髪ロングの美女。

離れてあげてとか言ってくれないの?

「……あー、星巡さん……んー、呼び捨てでいいか?よろしくな」

唯一の男の人、髪染めてるのか薄い茶髪のイケメンの人が挨拶をしてくる。

「ア……はい、、よろしくお願いします……」

「つぎ……じゃあ白風さんよろしくお願いします」

「はいはーい!」

美樹さんが振ったのは、私に抱きついてきている美少女ちゃん。

「白風優莉!よろしくね!」

優莉ちゃんと言うらしい。さてはテメー私と正反対の人間だな?天才藍さんは人柄もわかるのだ。

「シ、白風さん……よろしく……お願いします……あと、離れて、くれますか……?」

「ん?あーごめんね!可愛くてつい!」

離れてくれる優莉ちゃん。よかった、話聞いてくれる人だ。

「白風さん、ですね。よろしくお願いします。元気な方なんですね」

黒髪ロングの美女さんが挨拶し、

「優莉、よろしくな!」

イケメンが挨拶する。ここの容姿偏差値平均が高すぎるなこう見ると……

「じゃあ、次私行かせてもらいますね。私は皆ヶ瀬桜乃と言います。よろしくお願いしますね」

皆ヶ瀬さん、名前まで美女じゃないっすか。

お淑やかな感じだし、清楚枠はこの人かな……

「み、皆ヶ瀬さん……よろしくお願いします」

少しづつ話せるようになってるな、私……

「桜乃ちゃん!よろしくね!」

相変わらず元気いっぱい優莉ちゃん。

「よろしくな、桜乃。んじゃ俺っすね。俺は真瀬理人。よろしく!」

イケメンは理人くんと言うらしい。爽やか系の真性陽キャ……と言った感じだ。ちなみに真性陽キャとは陽キャにしがみつくような陰キャを見下すような仮性ではなく、誰にでも笑顔で明るくそして爽やかに接する、本物の陽キャのことだ。

「真瀬さ……」

「理人って呼んでくれ!」

「……り、理人くん、でいいですか……?よろしくお願いします……」

「あぁ、構わないよ」

「理人さん、よろしくお願いします」

「よっろしく理人!」

物腰丁寧な皆ヶ瀬さんと明るい優莉ちゃん。そして、爽やかイケメンの理人くん。

さて、覚えなきゃな。

あ、あとマネージャーさんの美樹さん。

「えー、自己紹介が終わったようなので、皆さんに今後の方針をお話していきますね」


1時間ほどかけて、今後のデビューまでの予定が話された。

まず、翌日にデビュー告知と、それぞれのモデルが配られるらしい。

それから二週間後、デビュー配信リレーが終わった後に投稿される『歌ってみた』の収録。

そしてそれから2週間後に、私から(不本意だったがよく考えたらハードル低くて逆に良かったと思う)デビューリレー、1人1時間、20:00〜24:00までの4時間のリレーを行い、その翌日18:00に歌ってみたの投稿があり、そしてそれからは各々の配信を行う、と言われた。

同時に、私たちの名前も告げられた。設定はモデルと一緒に送られてくるという。

私、星巡藍は『水瀬みなせリーネ』。ウンディーネ(水の精霊)の少女。

元気っ娘、白風‪優莉ちゃんは『犬崎いぬさきあおい』。犬の獣人の少女。

お淑やか美女の皆ヶ瀬桜乃さんは『聖緒せいしょショウ』。聖女様。

爽やかイケメンの真瀬理人くんは『薄明はくめいるい』。ヴァンパイア。

そんな4人がLive-Live三期生、通称ライブファンタジアというグループなのだそうだ。

「では、解散です!明日の9時からまたここに集合してください!」

「了解です」

「はーい!」

「わかりました」

「は、はい」



―――――あとがき―――――

初めましての方は初めまして。未来から見ている初めましてじゃない方はこんばんは、紅坂澪こうさかみおと申します。

私の処女作である本作、『引きこもり美少女ですが、Vtuberになりました -天才コミュ障のVtuber生活 百合の砂糖漬けを添えて-』をご覧いただき、誠にありがとうございます。

あまあまな砂糖漬けな百合を副題に、ポンコツ天才美少女星巡藍ちゃんが、コミュ障を克服しようと頑張りながら配信者活動をする…………つもりで書きます。不定期遅々更新ですがよろしくお願いします。

さて、軽く次回予告を。

Live-Live三期生、ライブファンタジア三人はどうやら親睦会を行う予定なようで。

ついていくことになってしまった大天才星巡藍ちゃんはどうなってしまうのか…………

次回、『親睦会ってなんですか?(緊張で酔いが回らないです)』乞うご期待!

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