英雄誕生記~少年、騎士を目指して旅に出る~
鶉 優
プロローグ
『人間ほど、恐ろしい生物はいない。』
はて、誰が言った言葉だったか……。もう思い出すことは出来ない。
しかし、言葉は今もこうして覚えている。そして、実感している。
自らの神を絶対とし、神によって支配されていた神代。その悍ましくも心地よい鎖は、神々の居なくなった現代でも複雑に絡み合っている。
私は目の前に居る人物に問い掛ける。
何故ここに居る、と―――。
目の前の人物は答える。
お前を殺しに来た、と―———。
私はこのやり取りが何十回、何百回と繰り返されて来たと思うと、悲しく感じる。
目の前の人物は、私に語り掛ける。
お前を殺せば、世界が平和になる、と―――。
本当にそうなら喜んでこの命を差し出そう。しかし、そうならないから今も彼と、彼らと戦っている。
それから少しの間、目の前の人物と会話をした。どうやら彼もまた、今の状況に疑問を感じているようだ。
だが、世の中には儘ならない事もある。自分の意思だけではどうする事も出来ない事がある。だから彼は剣を抜き、私達に刃を向けている。
そう。一人では今を変える事は出来ない。一人では……。
私は、遅すぎる心友に手を差し伸べて、こう言った。
「勇者よ。共に世界を変えよう。」
* * *
『世界ヲ分ケ隔テル事ヲ望マヌ。蒔イタ種ハ、私ノ知ラナイ花ヲ咲カス。』———ミーティオル神典 序章<モルゼホークの言葉>より―――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます