婚約破棄は双子の妹と浮気をしたせいですか?

皐月ふう

第1話 貴方が私の妹を殺したのよ!

「あんたが



 私の妹を殺したんだ!!」 



私、アスナは


妹の元婚約者であった


フランクに向かって


叫んだ。





私の叫びで、


会場が一気に静まり返った。




会場中の視線が


私に集まっていたが、


そんなこと気にしてられなかった。




この男に


なんとかして復讐をしたい。




大事な妹を、


酷い目に合わせたこの男を、


どうしても許せない。



怒りで強く噛み締めた唇には


血が滲んでいた。








私を見て


眉を顰めるフランクに


思い切り殴りかかった。





ここは、


王家主催のダンスパーティー会場。




今日は王子カイの


誕生日を祝うため、


多くの貴族が


城に駆けつけていた。




その分、いつもより多くの兵が


会場を警備している。




フランクに殴りかかるも


駆けつけた


数人の兵に羽交い締めにされてしまう。



「離してっっ!!!」



なんとか逃れようと暴れるも、


男の力に


私が叶うはずもない。




「お前が私の妹を



 殺したんだ!!」


私はもう一度叫ぶ。




妹が意識不明の重体になってから、


私は何度も


そう訴えた。



誰も、


聞いてくれなかったけど。





フランクは


兵に羽交い締めにされた私を


さめざめとした目で見た。




「私がお前の妹を



 殺すはずがないだろう。




 浮気したのは、



 お前の妹だ。





 そしてお前の妹は、



 それを悔いて勝手に



 自分で死んだのだ。」




よくもそんなことを言えるな。





「違う!!



 カナウはそんなこと




 絶対にしない!!」




フランクはふう、とため息をついて



「この哀れな女を連れて行け。」



と、兵に命じた。





「待って!!!



 証拠があるわ!




 ねぇ!



 誰か聞いて!!




 証拠があるの!!」





必死で訴えるも、


皆、冷たい目で私を見るばかりで


誰も助けてくれはしなかった。






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「なぜ、誰も信じてくれないの?」



私は牢屋の中で一人凍えながら、


そう呟いた。




私の双子の妹カナウは、


意識不明の重体で


一ヶ月間目を覚ましていなかった。




表向きでは、


婚約破棄を憂いたカナウが、


飛び降り自殺をしたことになっている。




フランクが言うには


婚約破棄の原因は


カナウが他の男と浮気したことだ。





だが、


そうではないことを


私は知っている。




カナウは誰かに、


フランクの冒している犯罪について


相談していたのだ。




「お願い、



 誰かさん。




 私の声に気づいて、、、。」




私がパーティ会場で


派手に暴れたのは、




きっと居るはずの


カナウの協力者に


気づいてもらうためだ。





私の双子の妹、カノウが


フランクと婚約したのは


半年前のことだ。




当初


二人はお似合いの婚約者に見えた。




しかし、2ヶ月前に届いた手紙には、


カナウが知った


フランクの驚くべき事実が


書かれていた。




『フランクが



 麻薬取引をしているわ。




 今、騎士団のある人に



 そのことについて相談してるところ。



 フランクにそのことがバレないように




 慎重に動いてるけど、、、。






 もしもバレたら、



 お姉ちゃんにも



 危害が及ぶかもしれない。 



 身の回りに気をつけて。』




その手紙が届いた一週間後、



カナウが浮気したという理由で、


カナウとフランクの婚約は破棄された。






そしてその次の日には


カナウは意識不明の状態で、


崖の下で見つかった。





意識不明のカナウは、


引きちぎられた


騎士団の紋章を握りしめていた。





そしてその紋章に



書かれた名前は


フランク。




そして婚約破棄される前、


カナウはこっそりと


フランクが麻薬取引している証拠を


私に送っていた。





だが、


そのことを騎士団に相談しても


門前払いされてしまう。




おそらく


騎士団の上層部であるフランクが


私を追い払うよう


通達を出しているのだろう。




「ねぇ、誰か、、、。」


膝に顔を埋める。



ほろほろと


涙が流れてきて止まらない。




きっとこれは、


カナウが命がけで



私に託したものなのに


私もこのまま捕まってしまうの?




諦めかけたそのとき。




「ごめん、待たせた。




 君がカナウの姉の



 アスナかい?」



私は顔をあげた。





「君を助けに来た。



 フランクを一緒に捕まえよう。」




私を助けに来たのは、


今日の主役。




「王子様!!」






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「フランク!!」


私は、


その憎き男に向かって


もう一度叫んだ。




「もう許さないわよ!!」




フランクは、


私を睨みつけた。




「このうるさい娘め。




 牢屋から脱走してきたのか?




 おい!!



 さっさとこの娘を捕まえろ!」



そう言うとフランクは、


私に向かって


ワイングラスを投げつけた。




ぶつかるっ。




身を縮めて、



目をつぶった。





あれ?


痛く無い。




恐る恐る目を開けると、


そこには



ワイングラスを優雅にキャッチした


王子カイがいた。





「捕まるのはお前だ。



 フランク。」





そう言うと


王子カイは



にっこり笑い、


私にウィンクした。



「後のことは



 僕に任せて。」




一斉に、


兵がフランクを取り囲んだ。






「ど、どういうことですか!?



 王子!!」





「お前を



 麻薬取引及び殺害未遂の罪で


 逮捕する!!」






「そんな!



 私は無実です王子!」


フランクが


哀れっぽく言った。



この嘘つき野郎め。




「麻薬取引の証拠は、



 こちらのアスナ嬢から



 しっかりと受け取った。





 それから殺害未遂の証拠は、、」




そこで


王子カイは言葉を切り


私の方を向いて言った。





「先程意識を取り戻した



 カナウ嬢から



 はっきりと証言されている。」




王子カイは優しく笑った。




「カナウが、



 目を覚ましたって。




 さっきご両親から、



 連絡があったよ。」




私の目から、


大粒の嬉し涙が


零れ落ちた。




カナウ、、



よかった、、。




「この悪人を捕まえられたのは



 君たち姉妹のおかけだ。」





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その後、


フランクは逮捕され、


その他大量の余罪についても


追求された。





罪は重く、


フランクは一生


牢屋で過ごすことになったらしい。






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