婚約破棄の次の日に王子と結婚してやったけど文句ある?

皐月ふう

第1話 あなたと婚約破棄した次の日に王子と婚約したわ!

「貴方と婚約破棄した次の日に


 私は王子と婚約したわ!!」




婚約の契約書を高々と見せびらかして


リリは言い放った。



元婚約者のフランソワは、


リリを見ようともせず俯いている。




「貴方なんかいなくなって


 私は幸せになって見せるわ!」




少しくらい私を見たらどうなのよ、


とリリは思った。





自分を裏切ったフランソワを


惨めにしたくて、


そのためだけ


リリは王子と結婚しようと決めたのだ。



「なんか言ったらどうなのよ!」



フランソワはゆっくりと顔を上げた。


その顔は憔悴しきっているように見えた。



名家のリリの家と違い


フランソワは没落貴族だ。







元婚約者のフランソワは


ぐっと拳を握ると



「リリ、俺、、、、!」




「はい、そこまで。


 リリ。もう行くよ?」




馬車で待機していた王子チャーリーは


馬車から顔を出してリリに声をかけた。




「だめだよ?浮気男くん。


 君はもうリリを見るだけで罪さ。


 声をかけるなんて以ての外。」




見るだけで罪?何言ってるの?


リリはしかめっ面でチャーリーを見た。



「ほーら、リリ、行くよ?」



チャーリーは急かすようにリリに言った。


このワガママ王子様の機嫌を損ねると


面倒だ。



「わかった。」






リリは踵を返した。



「バイバイ


 フランソワ



 私は幸せになるから。」





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帰りの馬車の中。




「なーんで泣く。


 リリはほんと馬鹿だねぇ」




チャーリーには鼻水を垂らして


号泣するリリが


本当に理解できなかった。




「だっで、、ごれでほんとに


 お別れだもんん、、!」




本当に意味がわからない。




チャーリーの可愛い可愛い幼なじみが


あんな男と結婚しかけるなんて


悪夢でしかない。




「あの男のどこがよかったわけ?


 金もなければ、頭も悪い。



 最初っからどっからどう見たってクズじゃん」






「良い人だったもん!


 好きだったもん~~!」




ああ、腹が立つ。


チャーリーはむしゃくしゃして馬車を蹴った。




こんな茶番に付き合うんじゃ無かった。


だが、良かったこともあるよね、と


チャーリーは気を取り直す。





「でも無事、


 俺とリリは夫婦になれたんだもんね~。」




え?とリリが首をかしげる。



「フランソワに復讐するために


 仮の結婚相手役お願いしたよね?」




「そんなの聞いてないけど?」


チャーリーはそっぽを向いた。




「ちゃんと言ったよ~!!」




「でも、結婚しなかったら


 あのクソ男だって、


 今日のが嘘なの気づくよ?」


とチャーリーは言う。





そんなの茶番だ。



あのクソ男は


一生悔しさに打ちひしがれていろ。



「私が、幸せになることが


 あの人に伝わればそれでいいの!」




やっぱり意味がわからないし、気に食わない。


チャーリーは頬杖をついて窓の外を見た。





チャーリーの可愛い可愛い


愛してやまないリリ。





小さい頃から一緒にいて


大きくなったら自分の妃になるんだと、


信じて疑わなかった。




俺はリリの手を掴んで自分の方に引っ張る。




「なーに?」




俺はその頬にくちづけをした。




「俺のためにも婚約破棄して


 泣いてよ。」


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