ちょっとしたお話
黒白 黎
とれちゃった
私の友人にKという女の子がいる。その子は同じ言葉を繰り返していうのが癖だった。
この日もそうだった。壁に貼られていたポスターを引っ張ってしまい、取れたポスターを見せながら「とれちゃったとれちゃった」って私に押し付けたのだ。私は「元の場所に帰しておけば」というのですが、「とれちゃったとれちゃった」とパニックを起こしているようで私に無理やり押し付け先に帰ってしまった。
私はため息をつきつつ、Kの癖のことを知っていたので、ポスターを元あった場所に戻して、私はKの後を追いかけた。
それからというもの、「とれちゃったとれちゃった」と言いつつ、私にそれを押し付け本人が逃げるという奇行に走るようになり、私はいつしかKを疎ましく思うようになり、あまり関わらないようにしました。
ある帰り道でKとすれ違いました。そのとき、Kはまたしても「とれちゃったとれちゃった」と言っていました。私はため息をつき「もう、なにやってん―――の」とすかさず口に手で隠すほど驚いてしまいました。
Kの顔の皮膚がバリバリと捲れ涙ながらKが「とれちゃったとれちゃった」と訴えていたのです。
私は恐怖で足に力が入らなくなり、Kに向かってなにか言おうにも声に力が入らなかった。それからKはぽろぽろと涙をこぼしながら両手で自分の皮膚を載せ、私に押し付けてきたのです。
そして「とれちゃったとれちゃった…どうしよう」と言い、Kは走って逃げて行った。
それからというもの、Kとは学校で会うことがなく引っ越しっていってしまった。あれは何の意味でどうしてそんなことをしたのか今では確かめようにもありません。Kが最後にいっていた「どうしよう」とは、自分の顔がなくなってしまったという意味なのでしょうか。
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