第16話「きみはガラスの向こう」

次の日の昼休み、香和ちゃんは、校庭に出ました

理愛ちゃんのいる特別教室は一階です

窓の外から理愛ちゃんが見えるはず・・


あ、いた・・


香和ちゃんは窓ガラスをバンバン叩きます

ガラス越しでよく見えないけど、理愛ちゃんが笑顔で窓に近づいてきました

「香和ちゃん・・?!

来てくれたの!?」

「理愛ちゃん、今、ひまー?なにしてるのー?」

香和ちゃんがガラスに鼻を押し付けてブタっ鼻をやると、理愛ちゃんが腹をかかえて笑いました

息で曇ったガラスに、ハートマークを書きます

変顔したり、ジャンケンしたり、絵を見せ合ったり・・

その日から、二人はガラス越しに遊ぶようになりました


香和ちゃんは、交換日記の続きのページに、新しく絵日記を描いて、窓の外から理愛ちゃんに見せました

理愛ちゃんも、家で日記を描いて持ってきて、ガラスの向こうの香和ちゃんに見せました

「交換日記はできないけど、見せ合いっ子すれば、同じだね!」


ある時、理愛ちゃんが言いました

「香和ちゃんにね、手紙を書いたの!」

理愛ちゃんは、手紙を開いて、香和ちゃんにも見えるように窓ガラスに押し当てました

"カナちゃん、いつもあそびにきてくれてありがとう!"


翌日、香和ちゃんも、手紙を書きました

"リアちゃんのびょうきなんて、わたしがハナイキでふっとばしちゃうよ!"

香和ちゃんがまたガラスに鼻を押し付けてブタっ鼻をやると、理愛ちゃんは笑い転げました

「・・あれ?そういえば、理愛ちゃん、文字が読めなくなっちゃったって言ってたけど、手紙の読み書きできるの・・?」

「うん!元気な時は、読めるの!」

「じゃあ、毎日手紙書くね!」


二人は、スマホの画面越しより、窓ガラス越しの方が、ずっと楽しいと思いました


でも、休み時間が終わるたび、理愛ちゃんは、とても寂しそうな顔をしました・・

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る