第4話「はながなれる」

理愛ちゃんは、今日は香和ちゃんの家に遊びに行きました

「香和ちゃんの家、香和ちゃんの匂いがすっごいする!」

「え?」

「お花みたいな、香和ちゃんの匂い!」

「うーん、なんにもしないよ?」

「するってば!」

香和ちゃんの部屋も、リビングもキッチンも、トイレもお風呂も、家中どこに行っても、お花のいい匂いで満たされていました

「ねぇ、お花の匂いは、魔女の薬なんでしょ?!

魔女の薬、どこにあるの?見せて!」

「いいよ!」


夕方、理愛ちゃんは、いっぱい遊んで家に帰ると、お母さんに言われました

「あら?理愛ちゃん、お花みたいな匂いがするわね。

香和ちゃん家の柔軟剤の香りが移ったのかしら?」

「え?ぜんぜん匂いしなしよ?」

「するわよ。

ほら、特に髪の毛が。

今日は香和ちゃん家にずっといたから、鼻が慣れちゃったのね」

「はながなれる・・?」

「ずーっと同じ匂いを嗅いでると、その匂いがわかんなくなっちゃうのよ。それを、鼻が慣れる、っていうの」

「ふーん。

香和ちゃんね、わたしがお花の匂いがするって言っても、ぜんぜんしない、って言うんだよ!すっごくするのに!」

「誰しも自分の匂いはわからないものよ。

いつも嗅いでるからね。

理愛は自分の匂い、わかる?」

「うーん・・わかんない」

「理愛と同じに、香和ちゃんも自分の匂いはわからないのよ」

「そっかぁ」

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