TS転移ヒーラーはチート武器で無双する

神松寺和尚

第1話 現世での最期

 ピンポーン!


 大学の夏休みに実家にも帰らず、一人暮らしのアパートでゲームをしていた俺はインターホンの音に気づき玄関に向かった。


「お届け物ですー」


 そう言って宅配業者が渡してきたものは、細く長いダンボール箱だった。立てると背丈よりも高い。


 宛先が自分の名前になっていることを確認し、宅配業者が差し出した紙にサインした。


「どもー」


 宅配業者が帰り、差出人を見ると親父からだった。何を送ってきたんだ。


 やれやれと思いながら段ボールを開けると中から「錫杖」と書かれた商品案内のチラシと、托鉢をする修行僧が持ってそうな杖……つまり錫杖が入っていた。


 商品案内を見るとトレーニング用らしい。そういえば親父は少し前にお遍路に行くと言っていた。さては旅先で見つけた商品を運動不足の俺に送りつけてきたに違いない。


 たしかにトレーニング用というだけあって重い。昔漫画で読んだ水滸伝にこんな錫杖を持っている登場人物がいたような気がする。


 2メートル近い錫杖を部屋の中で面白半分に振り回していたところ、その重さにバランスを崩しよろけてしまった。さらに運の悪いことに、床に広げていたテレビゲーム機に足を取られ、そのまま前につんのめってしまった。


 やばっ!と思ったときには時すでに遅く、後頭部に錫杖がぶち当たる鈍い痛みを感じた俺は、そのまま気を失ってしまった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る