人生に幕をおろしたいだけ

枝野豆夫

第1話 過去の記憶と腐った人生

「知ってる?この辺に変な生き物出るらしいよ」


「何それ?知らな〜い」


「なんか人の命を食べるらしい」


「怖〜」


「しかも健康な人の命はほしくないんだってなんか人生に疲れた人の命が欲しいんだって」


「なんか意外な設定」


「だよね〜」


「それに、見た目が変えられるとか、不死身とか、男か、女か、いろんな設定があるんだよ」


「へぇーなんかすごいね」


「地域の図書館にそういう関係の本あるんだけど放課後行かない?」


「いいよ、行こ行こ」




この話を聞いたのはいつだっただろうか、



たしか中学生の頃の話だった

中学のときはクラスに馴染めず昼休みはずっと寝たふりをしてクラスの人たちの会話を聞いていた

俺ならあ〜するとか、こうするとか想像していた

その中でクラスの女子が話しているものを聞いてしまった。

このときは人生を諦めるなんて馬鹿馬鹿しいと思っていた

せっかく平等に与えられたものなんだからしっかりまっとうしなくてはならないと思っていた

本当は平等なんてものはないのに



それが今では変わった

俺の人生はずっとそこそこだった

地元の小学校から地元の中学校へ

高校は数少ない友達が行くからという理由で地元の

そこそこ偏差値が高いところへ

大学も友達と同じところ

就職先も適当に受かったところ


高校では友達もそこそこいた

好きな人もいた(告白はしてないけど)

部活だってずっとしてたし

世間がよく言う青春らしいことだってした(友達とばかやったり放課後買食いしたり遊びに行ったり)

だけど俺は空っぽだった

何をしても空っぽだった

したことの大半は友達に誘われたから、先生に言われたから、上司に命令されたから

人の指図でしか動けない人間だった

不思議と社会はそれを受け入れてくれた

だけど俺は嫌だった

こんな自分が嫌で変えようとも思った

髪型

服装

喋り方

変えられるところは変えたつもりだった

だけど一つだけ変わらない物があった

考え方

それは簡単に変えられるものではなかった


人のため、自分ため、では変えられなくとも環境や時間の流れでは簡単に変わってしまうのだから不思議だった



俺はふと考えてみた

こんな人生をあと80年近くも続けるのかと

人生100年時代とは言われているが100歳まで生きる気力がない、明日生きるのだってしんどい

そこで考えたのが


人生のリタイア


結局いつかはリタイアするのだから今しても同じだろうと思った


輪廻転生論が本当なんだとしたらリセット

1からやり直す

という表現でもいいのかもしれない


人生が終わるならそれでいいと思った

やり残したことなんてないと思っていた



そんなことを考えながら家への帰路をたどっていた




「はじめまして」



人生を変える出会いをした

この出会いがなければ俺はずっと腐ったままだったかもしれない

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