第15話

15話 街コンに向けて

 初めてしっかりとラジオを聴く。

 リスナーからのメールコーナーの途中から聴き始めたリスナーからのパーソナリティへの質問だったりリスナー、パーソナリティの普段の生活の感想、疑問、悩み相談などの話がスマホから流れている。

 自分が体験したことあるようなないようなそんな話が流れている。友達からもたぶん聴かないし話さない話が聴こえてきてなんだか、1人の人生を勝手に盗み聴きしてるような気分にもなった。

「私は高校生です。来週、全校生徒の前で発表しないといけません。今までそういうことをしてきてないのに話さないといけないのが憂鬱です。どうしたらいいですか」

 高校生かぁ。いいなぁ。青春だなぁ。私はこれまでの人生で大人数の前で発表したことは1度もない。あってもクラス単位だ。人の前で発表だなんて、お金も出ないのに高校生も大変だなぁ。と思いながら座椅子の背もたれにもたれながらぼーとしながら聴いていた。

「何を話すのか分からんのんやけど、全校生徒の前で発表ってことは悪いことではないと思うねんなぁ。いいことなら、自信を持っていいと思う」

 パーソナリティは質問に答えていく。

「でも、俺もこういう仕事をしてるのに発表とか苦手やったし、人のことは何も言えへん立場やけど」

 少し笑って呟いた。

「そもそも、人前で話すの苦手やし、俺がもし自分やったら絶対やりたくないと思う。やりたくない気持ちはめっちゃ分かる。でも、選ばれてる時点ですごいと思うんよね」

 うん。すごい。

 と思っていたら、もう1人パーソナリティがいたらしく

「俺には分からないんやけど、頑張れよとか、羨ましいとか言われたり思われたりして、余計プレッシャーになってやりたくないーとかになったりするんかなぁ。これを言ってしまったら元も子もないけど、俺的にさ、人の発表って誰も聞いてないと思う」

 誰も聞いていないかー。そう言えば、学校の朝礼とか思い出そうと思っても何も覚えてない。

「誰も聞いていないってのは言い過ぎたやで。いやー、まぁ俺の遠い記憶を思い返せば、あんまりに他の人の発表とか記憶にないなぁって。仲いい友達くらいじゃない。ちゃんと聞こうと思って意識するの。あとは、優しい人だけ。ほとんどの人は、BGM扱いされるだけでしょ。早く終わらないかなぁって思いながら聞くんだし。って思えばそんなに気にすることじゃないんやない。仮に噛んだり失敗したりしてもどうせ皆忘れるよ」

 BGMかぁ。

 その後も話が続いたが、その後の話はほぼ聴いてない。他人なんて気にしても仕方がないのかなぁ。

 仮に私がどの服を着ようが、赤いスニーカーを履こうが気にされない。今までBGMだったのに、勝手に聴いてもらってると勘違いしていただけだ。BGMの曲が突然変わっても気になるのも一瞬でどうせまたBGMと化するならスニーカーごとに悩むことはないだろ。

 そう思うとだんだん赤いスニーカーを履くことが私にとって当たり前になってきた。

 どんな服装で街コンに行こうか。出会いなんかよりスニーカーを履くことが楽しみになってきた。


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