第14話

14話 買い物帰り

 買い物の帰り道、スニーカーを買ったときにスニーカーが入っていた箱をお店に置いておくべきだったのを歩く度に足に当たる箱を見て思った。邪魔だなと心の中で思いながら歩いた。結局、買ったのはスニーカーだけだった。大きな袋を揺らしながら、とりあえず家に帰った。

 家の鍵を出すのも、大きな箱が邪魔で鍵が取り出しにくかった。家の中に入り、荷物を置いて、一旦座った。

 そしてぼーっと、電気の付いてない照明を見た。

「どうしようか……」

 赤いスニーカーを買って満足したはずなのに、家に帰ってからは満足よりも不安の方が強くなっていた。まぁ、不安というか少し恥ずかしいような、人前に出るのに自身がないという気持ちに近い気がする。

 赤いスニーカーを買ったはいいが、買い物の目的である街コンに履いていくかどうか悩む。そもそも赤いスニーカーをどう履けばいいのか分からない。

 私は社会人としての経験値からその他大勢になる格好ならいくらでもできる。赤いスニーカーを履くことは悪いことではないのは分かっている。でも、この数年間、私の好みの格好をしてきておらず、赤いスニーカーを通して好きな格好で出かけるということができなくなっていることに改めて自覚をした。

 買ってから時間はそれほど経ってはないけれど、手に余らすなら赤いスニーカーなんて勢いで買わなければよかった。

 もとは普段の服装になりたくないから買ったのに、いざ別の自分になろうとして、から廻って辛くなる。赤い靴が自分に合ってるのか合っていないのかなんて誰に聞けばいいのだろう。

 少し、日が暮れてきた。部屋の中が自然と暗くなっている。そういえば家に帰ってから、テレビすら付けていなかったことに気がついた。

 音のない部屋にいるから、気が滅入るんだ。自分の心の声しか聞こえない環境を止めてみよう。

 普段ならテレビもしくは動画サイトで映像を流す。しかし、今日は何がいいのかも分からなず、映像の明るさがしんどい。でも、音がない環境もしんどい。なんとなしにスマホの画面を触った。いつも無意識に画面を触り、無駄な時間を過ごす。普段ならそれでも大丈夫だが、やっぱり何かが違った。

 とりあえず好きな音楽をサブスクサイトから流す。よく流す音楽をいくつか流した。

 でも、スッと聞けないというか、違和感を感じる。

 ホームのおすすめをいくつ聞いてもしっくりこず、ホームを選択画面を行ったり来たりする。おおすすめに出てくるのも違うような気がして普段見ない画面へと進めていく。

 普段見ない画面には、様々なジャンルに区分けされており、選択すると何が出てくるのか私には想像つかない。ロックだったり、ポップだったり、ダンス曲なんてものある。

 その中でもラジオという文字が気になった。普段ラジオを聞くことはない。だから何を聞いていいか分からない。ひたすらニュースが流れるか、洋楽とかコアな音楽が流れるかイメージで私には縁のないものだと思っていた。やはりニュースもあるようだが、適当にラジオを流すと私にとっては懐かしい曲が流れた。

「もっと年配の、懐メロとか流れてるのだと思った……」

 司会?パーソナリティ?でいいのか進行の人は、若く声的私と変わらないような気がする。少し部屋が明るくなった気がした。

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