第3話

変化

 仲の良い同期の陽子とは所属グループは違うが、同じ部署ということもあり、入社してからほぼ毎日話している。今回の飲み会の場でもいつかどこかでした会話の続きの話をどちらともなく始めた。最近の話題はもっぱら自分の年齢について触れることが多く、他の同期や自分自身の周りの人間関係と自分を比べて嘆くという内容がほとんどだ。

 そんな話を聞いていた私の目の前に座っている先輩の村上さんが、

「そんなに、結婚とかに焦るなら街コンでも行けば?」と会話に参加してきた。

「私も行ったことあるし、アプリよりかは会場を用意されている分連絡する手間も省けてハードル低いと思う」

 と村上さんがノリノリでアドバイスを言うけれど、私は愚痴りたいだけで行動したいわけではないのが本音ではある。でも、ここは話を合わせた方が無難だし、こんなとこでプライベートの話してしまっている私も悪い。私は適当な相づちをしつつ、内心はこの話を広げるか終わらせるか考えていた。

 当の先輩は、合コンも街コンも参加し、アプリも使用していた。しかし、どれもしっくりこず、今は職場恋愛をしているという噂である。

「街コンって行ったことないんですけど、どんな感じなんですか?」

 と内心どうするか悩んでいた私をよそに陽子が村上さんの話を掘り下げていた。

「えーーっとね、色々種類があるけど、私が行ったのは制限時間内に会話をするのを繰り返して最終的に気になる相手に連絡先を交換する感じのやつかなぁ」

「街コンと言えばって感じですね!!」

 陽子がリアクションをする。

「そうそう、the街コンって感じのやつ。初めての場所って無駄にハードル高いけど、出会いがあるだけマシって考えたら楽なもんよ。今思えばさ。だから、人生経験として行ってみたら?いなかったらいなかったで経験ってことで」

「それもそうですよねぇ、気にはなっていたんですよね。ねぇ、どう思う?行ってみる?」

 食べ残りそうな物を自分のお皿に入れている最中の私に陽子が不意打ちに話しかけてきて、対応できず間が空いた。

「ねぇ、私たちも街コンに行ってみる?」

 会話聞いてないことがばれていたのか、もう一度陽子が聞いてきた。詳細はよく分からないけど、まぁ陽子が行くならいいかなぁ。人生経験として興味もあったし断る理由もあまりない。

「行くのはいいけど、いつ行く?」

「勢いがあるうちに行きたいよね。こういうのは……」

 陽子は私以上に結婚に焦っているのでは?と私は感じている。私自身は、30歳が近づければ近づく程どうにでもなれと言う気持ちになってきたが、やはり一般的ではない生き方は後ろ指を指されるような感じがし、焦る気持ちも分かる。独りぼっちになるような。そして、それを感じて焦る私自身が嫌いになるし、陽子に対しても負の感情を抱いてる。

「そうね、いいのがあったら行こうよ」

 私がそう答えると陽子は少し嬉しそうだった。

 飲み会も終わり、家へ帰る。もう、二次会へ行く元気はない。

 今から帰ると普段の帰宅時間と変わらない時間だ。でも今日は、お風呂に入って寝るだけだから気が楽だ。

 家に着いたら、一応街コンについて調べないといけないなぁ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る