私の二つ目の心臓は止まっている
黒羽カラス
第1話 蘇る記憶
自身の酒臭い息で目が覚めた。
午前六時前後を想像して煎餅布団から這い出し、床に丸まっていた
温かい格好で窓寄りの
数時間を費やしたあと、一階で遅い朝食となった。定番のパンとゆで卵、紅茶で腹を満たす。歯磨きを終えると再びネットを
目薬を差す。必要な情報は全て手に入れた。記憶から抜け落ちそうな箇所はアプリのメモ帳に保存した。
集中力が途切れて喉の渇きを意識した。
上がり
私は身を潜めて会話の内容に耳を傾ける。母の話し相手は心臓の機能低下が原因で半年前にペースメーカー植え込み手術を受けたという。担当医から術後は日常生活を送れるようになると説明を受けていた。安心したのも束の間、次々に起こる不具合に怒りが収まらず、不満を言い立てる。熱心に聞いていた母は目に怒りを込めて、同意の言葉を軽く咳き込みながら返した。
私は足音を忍ばせて二階へ引き返す。自室の座椅子に腰を下ろして炬燵の中で両脚を伸ばした。瞼を閉じて軽く息を吐く。胸中で真っ白に朽ちた記憶が形を成し、ゆっくりと色付いて
三十年以上、経過しても当時を思い出すと妙な気分になった。
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