第24章 奇妙な友情
「なかなかやりますわね……射撃は苦手と聞いていましたもの……格闘戦は得意と言う裏返しですわね」
シミュレータから出た麗子はそう言って苦笑いを浮かべる誠に右手を差し出した。
「これでも一応本職のパイロットなんで……僕には格闘戦しかありませんから」
誠はおずおずと右手を差し出し麗子と握手をした。
「なんだなんだ……素人相手に苦戦しやがって……負けたら射殺だったのによ」
「そう?本職じゃない割に上手かったわよ、田安中佐の操縦。かなめちゃんも初戦のシミュレータでは誠ちゃんに負けてるじゃないの。格闘戦限定で」
かなめとアメリアは管制室から出て誠達を見つめていた。
「さすが中佐は何をやらせても一流でらっしゃる」
鳥居は感心したように麗子を見つめていた。その疑うことを知らない純朴な笑顔に誠は少し好感を持った。
「当然ですわ……武門の棟梁たるもの武器の扱いに精通していなければなりませんもの」
「まあどう考えても神前が不利な状況を設定してあったからな」
得意げな麗子に向けてカウラは小声でそうつぶやいた。
「それにしても気に入りましてよ、司法局実働部隊。司法局一の実力機動部隊の名は伊達ではありませんのね」
誠のおかげで麗子の中でこの『特殊な部隊』の株は急上昇しているようだった。その様子に誠達は胸をなでおろした。
「神前のおかげだな……これでうちの株も上がる」
「そうか?麗子に褒められても誰も得しねえと思うけどな……褒められるのは悪い気はしねえが」
少しばかり嬉しそうなカウラと対照的にかなめは不機嫌そうだった。
「じゃあ次は運航部か」
「やっぱりそうなるのね」
シミュレータルームを出ていこうとするかなめに向けてアメリアはため息交じりでそうつぶやいた。
「運航部は美女ぞろいと聞いていますわ……楽しみですわね」
女好きの麗子らしい反応に誠は苦笑いを浮かべた。
廊下は相変わらず寒かった。誠達はシミュレータルームの隣の扉の前に立つ。
「じゃあ私が良いって言うまで入ってこないでね」
「何すんだ?」
「いろいろと片付けるんだろ」
アメリアの警告にかなめとカウラはため息をつく。
「運航部は全員ラストバタリオンの女子隊員で構成されているんですよね」
カメラを確認しながら鳥居はそう言って部屋に滑り込むアメリアの背中を写真に撮った。
「まあな……東和でアメリアと気の合う人間となると限られてるからな……普通の人間は耐えられる環境じゃねえ」
かなめは複雑な表情を浮かべながらそう言って閉まった扉を見つめていた。
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