第14話 救いの子供

「うっせーなー!静かにしろ!」


 突然扉が開かれ、そこから小さな人影が現れた。麗子はその言葉に驚いたように急に振り向いた。


「クバルカ中佐……」


 誠はその人影、クバルカ・ラン中佐に泣き声で話しかける。


「うっ……」


 ランは明らかにうろたえていた。誠達にすべてを押し付けて済ませるつもりだった監査の二人を見ているその瞳は泳いでいる。


「これは……監査室長……」


 少し引きつった笑みを浮かべながらランは麗子に右手を差し出した。


 その時麗子の瞳が光った。


「うん、かわいいから良し」


 麗子はそれだけ言うと呆れて立ち尽くすかなめの前をハンガーに向けて歩き出す。放置された誠達はただ黙ってその場に立ち尽くす。


「なんだそれ……」


 さすがに麗子の幼馴染だというかなめもあきれ果てたようにそう言うのが精いっぱいだった。


「ほら!かなめさん!案内してくださいな!」


 すでに麗子の隣には鳥居が大きすぎるカメラを手に微笑んでいる。


「なんか……アタシしたか?」


 呆然と立ち尽くすランの肩にアメリアがそっと手を置いた。


「中佐、グッジョブ!」


 アメリアはそれだけ言うと麗子達に向けて歩き出す。


「なんだか知らないが……中佐のおかげで何とかなりました」


 カウラはランに敬礼した後アメリアの後を追った。


「そう言うわけなんで」


 誠もまた続いてランに敬礼する。


「西園寺……アタシは何かしたか?」


「したんじゃね?」


 ランを置いてかなめもまた走り抜けていく。


「誰か説明してくれ!」


 そんなランの悲痛な叫びを背に誠達は05式などのアサルト・モジュールが置いてあるハンガーへ続く扉の向こうへと消えていった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る