第二部 奥義への道(13歳)
Episode011 誘拐犯?は可愛い女の子
《──開眼──》
セシリア 13歳
職業 ナシ
固有スキル ナシ
会得スキル 《無想状態》《増幅炉(E)》《武装(C)》
HP 89 上昇率53
MP 183 上昇率84
攻撃力 102 上昇率89
敏捷力 123 上昇率51
《──詳細ステータス欄───》
名前:セシリア
状態:第一次成長期
《経験値倍増》
《記憶力向上》
《賢者の祝福》
適正職業:《冰力使いA⁺》《剣士B⁺》
能力の限界到達地
HP ????
MP ????
攻撃力 ????
敏捷力 ????
会得スキル数 ????
《──閉眼──》
奴隷市場でベルティスが驚いたのは、セシリアの貧弱なステータスを見たからではない。
セシリアの成長率はすべてにおいて測定不能だった。
そしてセシリアは、誰からも教育らしい教育をされず生きながらえ、第一次成長期を終えていなかった。
鳥肌が立ったものだ。
詳細なステータス鑑定ができ、かつ理解ある教育者が彼女には必要。
だからベルティスは、かたときも離れずセシリアの成長を見守り続けている。
冰剣を与えたので、今後ますます彼女の能力があがっていくことだろう。
「がしかし……。さすがのセシリアも女の子の友達がいないと、将来孤高の剣士になってしまう。それは困る」
男の一匹オオカミ状態ならいさ知らず、あれだけ可愛らしい女の子に友だち一人いないのは不憫だ。今のところセシリアが友だちを欲しがったことはないが、なにしろ師匠兼保護者がベルティスなので、我慢しているという可能性もある。
とはいえ、ベルティスにセシリアと同年代の知り合いはいないに等しい。
例えいたとしても、セシリアと性格的に合うかどうかは別問題だ。
なにか、出会いの場でも作ってやらないといけない。
「そんな公の場所にセシリアを連れて行ったら……ヘンな虫とかつくよね」
「親バカが過ぎますマスター。公の場所に連れて行かずして、どうやってセシリアを最強だとみなに知らしめるのですか」
「可愛いは最強?」
「バカですね」
「可愛さを競う大会でならすでに最強の域に達していると思う……」
「度が過ぎます」
愚痴るようにベルティスがテーブルの上でうなだれる。
ローレンティアは大きなため息をついていた。
「ではとりあえず、三人で一緒に繁華街へ参りましょう。セシリアには人に慣れてもらわないといけません。箱庭の最強剣士だと言われたくないでしょう?」
「了解……」
ベルティスはセシリアを呼んで、移動を開始する。
冰結宮殿、687階層──
フィネアネス皇国、芸術と娯楽の都市ザッハミティエへ。
ザッハミティエは皇国随一の観光都市だ。
歴史ある神殿や教会、遊泳施設、大型劇場を含んだ繁華街。
あまりセシリアに見てほしくない
「すごーい」
「こらこら。上を見上げてばかりいると迷子になるよ」
「でもお兄ちゃん、すごいよ! なにがすごいかってみんなすごいの!」
セシリアは、美しい街並みとたくさんの人の姿に、興奮を隠しきれないようだ。
ベルティスにとっては、いつ変な男がセシリアを攫いやしないかと常に意識を集中させねばならない。これは賢者の固有スキル『千里眼』があったとしても気が気ではなかった。
例えば、セシリアが警戒を抱かない優秀な隠密スキル持ちの人間が近づいてきたとすれば……。
「セシリア?」
──いない!?
これは賢者としてあるまじき失態だ。
すぐさまこの687階層全域の時間を止めてセシリアの救助に向かわねば。
「マスター……あなたそれで、どうやってセシリアを最強の剣士に育てるんですか」
顔色をなくして冰力を練り始めるベルティスに、ローレンティアがあきれ顔を寄越す。
「セシリアがちょっとでも傷つきそうになれば、禁断の術式やら古代冰力をぽんぽんお使いになるおつもりで?」
「ダメ?」
「甘やかし過ぎはダメでございます。最強に至るまで、セシリアが少々の怪我や危険な目に遭うのは当然でしょう。自重してください」
「ぐぅの音も出ない。……分かった、そうする」
大賢者様がしおらしくなったところで、ローレンティアはさっと辺りを見渡した。
「彼女、誰かと一緒にいますね」
「ほんとだ。ちょっと様子を見てみようか」
「そうですね。もしかしたら、初のお友だちになるやもしれません」
◇ ◇ ◇
「ちょっとこっち来て」
その言葉は、驚くほど素直にセシリアを従わせていた。
綺麗な声の持ち主。
目深くとんがり帽子を被っているため、腕を引っ張る相手の顔は分からない。
不思議と恐怖は感じなかった。
「あなた誰なの?」
「そうね、名乗っておいた方が不審者だと思われないで済むわ。私はユナミル・ロール・イスペルト。あなたは?」
「セシリア」
「セシリアって言うのね。素敵な名前じゃないの」
名前を褒めてくれたことは嬉しかったが、ベルティスに無断で離れてしまっていることに、セシリアは大きな罪悪感を感じていた。
彼女はどこに向かっているのだろう。
せめてベルティスに、自分がユナミルという少女といることを伝えたほうがいのではなかろうか。
心配してしまうのでは?
ユナミルはセシリアの異変にすぐ気付いた。
「一日中あなたを誘拐しようってわけじゃないから大丈夫よ。ただちょっと、半日だけ私と一緒にいてほしいだけ。……それをあなたの親に説明しても、納得してくれるはずないでしょ?」
「誘拐? リア、誘拐されてるの?」
「そう、私はあなたを半日だけ誘拐するの。……用事が済んだらすぐ帰してあげるわ」
そのとき初めて、誘拐犯がその美しい顔を見せてくれた。
なにより目を引くのは、腰まで伸びたピンク色の髪だろう。なにやら高級そうな、いいシャンプーの匂いもする。
服もこれまた可愛らしい。
つい最近、人間と同じ生活を始めた自分では、とても言い表せないような可愛い服だった。
「ついてらっしゃい、可愛いエルフさん。ちなみに誘拐犯だけど、このお礼は弾むわよ?」
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