二人の門番は、謎を解き国を守る
まにゅあ
第1話 二人の門番
空が青い。
門の前で突っ立って、そんなことを考えるほど、僕は暇だった。
同じく僕の隣で暇を持て余していたレオンが、
「暇だな~。ガルもそう思わねえ?」
と、訊いてくる。彼はさっきから槍を振り回して気晴らしをしているようだった。
僕たちは、ヴァルガ王国の門番を務めている。
入国を希望する者たちを、通しても大丈夫か判断する仕事だ。
だけど、ヴァルガ王国は小さな国なので、やって来る者も少ない。
そういうわけで、門番の仕事は、手持ち無沙汰になる時間が割と多い。
「暇ですね。だけど立っているだけでお金がもらえるのです。割のいい仕事だと僕は思いますが」
冒険者や商人に比べて、稼ぎが少ないのは間違いない。しかし、冒険者みたいに命を懸けてダンジョンに潜る必要もなければ、商人みたいに汗水垂らして色んな国に馬車を走らせる必要もない。
「楽かもって思って門番になったけど、こりゃあまりに楽すぎる。暇すぎて死んじまいそうだ」
レオンはそう言って、何もない空中を、槍で鋭く突く。
僕たちが門番の仕事を始めたのは、三か月ほど前だ。前任の門番二人が転職して冒険者になるという話で、後任を探していた。僕たちもちょうど学校を卒業して、仕事を探していた。特になりたい職業もなかったし、門番の仕事は楽だと聞いていたから、即決した。
僕は今のところレオンみたいに暇で死にそうとまでは思っていないが、いずれそんな風に感じる日が来るのだろうか。
ひょっとすると、前任の門番二人も、暇に耐えきれず冒険者に転職したのかもしれない。
「なんか事件でも起きねえかな。最近よく聞くじゃん。偽の金が出回ってるって話。あんなに大きな事件じゃなくてもいいからさ」
「……そのような話、僕は知りませんが」
「マジで⁉ ヴァルガ王国だけじゃなくて、色んな国で偽の金が流通しているらしいぜ。ヴァルガ王国なら、一番価値の高いマユラ金貨だな。割とそっくりに造られていて、騙される奴も多いって話だ。誰がそんなことしてるんだろうな」
僕はポケットに入れてある巾着袋を取り出して覗いてみた。
マユラ金貨は数枚あるが、まさかこれらが偽物ということもあり得るのか。
「偽物は、ガリルの樹の葉っぱの数が、十四枚じゃなくて、十三枚らしいぜ」
ガリルの樹は、ヴァルガ王国の国樹である。一年中白い花を咲かせ、寿命が尽きるまで決して枯れないことから、永遠の繁栄を象徴する樹とされている。
僕は金貨を取り出して、描かれている葉っぱを数えた。
――大丈夫、どれも十四枚だ。
「偽金貨事件ほど大きな事件じゃなくていいんだ。この暇な時間を潰せる、ちょっとした事件でも起きてくれれば、俺の寿命も伸びるってもんだ」
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