END2


一美「どうもこうもないでしょ、手分けして探さなきゃ。見つかったらLINEして、校門に行って」


 二人の反応を待たず、一美は飛び出した。懐中電灯は一人一つずつ持っているから問題は無い筈。寧ろ問題は一美自身にあった。


一美(ああ、もう。どうしてこんなことになっちゃったの?)


 いつも周りを引っ張りまわしている一美だが、その実内心はいつも不安だった。その傍若無人っぷりに我慢ができなくなった友達に何度も見放されてきた。


 それでも自分の弱さを悟られるのが嫌で、いつも強気に振る舞い、自分の優柔不断さを突かれるのが嫌で、いつも自分で新しいことに目を付け、周りを巻き込んできた。


 そんなことを何度も繰り返し、結局最後まで付いてきてくれたのが今の三人だ。口では言えないが感謝していた。いつまでもこの四人でいられたら良いと思っていた。


 その十莉が、ここで自分のせいで何か遭ったとあっては今の関係が崩れてしまう。その焦燥感で一美は暗闇の恐怖を克服し、必死で十莉を探していた。


 そして、幸いというべきか、一階降りた廊下の先で人影を見つけたのだ。


一美「十莉!?」


 最初人影は一美の声に反応しなかったが、一美が近づいていくと、勢いよくこちらを振り向いた。


一美「十莉!大丈夫?けがは無い?」


十莉「……ウン」


 十莉だ。無事だった。良かった。でも何やら反応が鈍い。ボーっとしているようにも見えるが、目はじっとこちらを見ている。それに声がかすれている。叫んで喉を痛めたのだろうか


一美「十莉、もう止めにして帰ろう。悪かったよ、つき合わせてさ」


十莉「……アア、ウン」


一美「十莉?」


十莉?「ウン?」


 ……何かがおかしい。何がとは言えないが、全体的におかしい。これは十莉じゃない。

 『こっくりさん』は低級霊を呼び出す。そして、呼んでいる途中で十円玉から手を離すと呪われると聞いた。呪われるとは、つまり……憑りつかれる?


一美「ちょっと待って。千秋と百木にも連絡して、校門の前で待っててって言うから」


 そう言って、一美はスマホを取り出す。その発言に対し十莉は、


十莉?「ウン、ワカッタ」


 その一言で確信した。


一美「……あなた、誰?あなた、十莉じゃない!誰よ!?十莉をどうしたの!?」


十莉?「チッ、キヅカレタカ」


 言い終わる前に、十莉の頭から狐の耳が生え、尻から針のようなとげとげしい尻尾が飛び出した。それと同時に、階段下から声がした。


百花「一美?どうしたの?十莉見つかったの?」


一美「百花!来ちゃダメ!」


百花「何?どういうこと?」


 言いながら、階段を飛び降り、百花を抱きかかえるようにして下の階へ逃げる。玄関へと向かいながら一美は百花に説明する。


一美「逃げるんだよ!あいつは十莉じゃない!狐の化け物だよ!」


 初めて訪れる場所で暗闇の中、必死に出口を求めて走った。そして、その向かう先にもう一人人影を見つける。思わず足を止めるが、息と動悸は止まってくれない。


一美(うそ!先回りされた!?)


 足を止め、懐中電灯を向けると、その顔は……


一美「なんだ、千夏か……千夏、今は何も聞かないで。とにかく逃げるよ」


 一瞬の安堵。一対一から三対一になれたという数的優位、玄関まで後数メートル。十莉の事は辛いし、悲しいけど、今はとにかく逃げたい。あの得体のしれないモノから離れたい。

 そう思いながら千夏に近づいて、手を取る。説明する時間はない。その気持ちの余裕も無い。まずはこの二人を連れて逃げなくては。


 その時、背後から聞こえてきた声は、さっきも聞いた擦れた無機質な声だった。


百花?「No1000、シカタナイ、ヤツハ、コロス、シカ、ナイ」


千夏?「……アア、ソウダナ、No100」


一美「……ダ   」



***



百花?「No10、コレハ、オマエノ、シッタイダゾ」


十莉?「ワカッテイル、コンナニ、ハヤク、バレルトハ、オモワナカッタ」


千夏?「マアマテNo100、テイコウ、サレル、マエニ、キレイナ、ソタイガ、テニ、ハイッタ。スグ、イレレバ、モンダイ、ナイ、ダロウ」


十莉?「Noハ、ドウスル?」


百花?「ムロン、No1ダ」




END2『キョウ、カラ、ワタシ、ハ、No1』


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