A CURSE 2

蒼雲綺龍

0章 終わりからの、prologue…。 / 主な登場人物

*本作品に登場する団体や個人は、実際のものとは関係がありません。 また、現実的の公的機構と登場する公的機構の構造の一部の内容、そして法的な解釈の内容が著しく変わっている所が有ります。 その当たりをご了承ください。



【終わりからの、prologue…。】



その幕引きは、世間を騒がせた犯人本人を含め関係者にとっては、突然の事だった。


だが、原因を産んだ犯人の業が、廻って自分に向かったと云えよう。


然し、これが一つの‘理’を破り、恐るべき魔物の自由を解く事に成ろうとは………。


新たなる始まりは、一人の男の死に因って始まるのだった。



時期は、夏。 大都会・東京に、湿った生暖かい風が吹き。 都内に広がった鉛色の空は、今にも雨が降りそうな様相を呈していたが…。


そんな都内の中でも或る一角の空には、墨汁の如く黒い闇の様な黒雲が広がり。 天に向かって聳える高層マンションの真上にだけ、極めて狭い範囲にほぼ無風のままに土砂降りの雨が叩き付けていた。


そのマンションから駐輪場やら、侵入防止の垣根代わりで在るコンクリートの壁を隔てた50メートルほど南に行った所に。 この辺りの住宅街を抜ける、狭い道が在る。 この道の片側は、どちら側の交差点に行くにしても、信号機に行き着くまでコンクリート塀に阻まれていて。 その幅も、車一台ぐらいしか通れない、舗装道路だった。


今は、まだ日没寸前の夕方だが。 雲の所為か、全てが仄暗い。 その狭い通りを歩いていた通行人の中に、二人の女子高生が居る。


色白で、赤い髪を背中まで流し、上着は白い半袖のYシャツだが、胸元までボタンを外している女子高生が。 茶髪で、日焼けした肌をした服装が自身と似た様な、横を歩く女子高生に向かって言う。


「ねぇ、マキさぁ。 スカートぐらい押さえなよ。 後ろから来る風で、パンツ見えてるよ」


だが、丈の短いスカートを穿いて、吹かれる強風に舞うのも任せてる茶髪のマキは。


「別に、もう見られたっていいよ。 こんなに風が強いんじゃ、押さえても後ろが捲れちゃうし。 それより、チサ。 ホラ、横見てみなよ」


「え~? なぁにぃ?」


チサと呼ばれた赤い髪の女子高生が、茶髪の女子高生マキに言われて見ると。


「マジ、スゴくなぃ? アタシ達には、強い風が後ろから吹き付けてるのにさぁ。 壁の向こうのマンションのトコ、雨が間下に落ちてて。 然も、塀の所ギリギリ向こう側で降ってるよ」


「あ~、マジだぁ。 コレってチョー珍しくない?」


「だよね~」


確かに、コンクリート塀を境に見えない仕切りが在るみたいに。 雨が左側の壁に沿って、無風状態で降っているの見た二人。


だが、色白のチサは、汗ばんでベトベトした制服のYシャツを動かすと。


(てか、もう雨じゃん。 朝のニュースじゃ、もう少し遅くからじゃ~無かった?)


と、毎日見る気象予報士の能力を疑いつつ。


「でも、マキ。 雨が目の前に来てるんだから、走って帰った方が良くナイ? 濡れたら、多分は服が透けて下が見えちゃうよ」


別に見られても構わないマキは、まさかと思って。


「チサ。 アンタ、もしかして、下着を着けて無いの?」


茶髪のマキが、赤い髪のチサにこう言う時。


二人の近くまで、自転車が迫っていた。


すると、先に気付いたチサが、


「チャリだ」


と、言って右側の側溝に寄る。


二人が自転車を左右に避けた直後で、また隣り合う様に寄った時。 茶髪のマキの頬に、ポタッと雫が落ちて来たので。


「あ、コッチまで降って来ちゃったよ」


と、彼女が呟いたのだが…。


雨かと思ってマキの顔を見た赤い髪のチサは、急に付いた赤黒い液体がハッキリと見え。


「マキ・・アンタ、顔に血がつ…」


と、言い掛けた瞬間だ。


言われた方の茶髪の少女マキの視界に。 壮絶な死に顔をした人の顔が、上から降って飛び込んできた。


(え?)


その瞬間的に見えた、恐怖に染まった人間の目の様子だけはハッキリ見えて。 彼女が目をめいいっぱいに見開いた時で在る。


“ぐぅしゃあああああんっ!!!!!”


人の身体が落下した圧力・衝撃で潰れる音が、猛々しく辺りに響き渡った。


「・・・」


友人の頬に血が付いた・・と、言い掛けた少女チサだが。 眼付きを変えた友人のマキを見てしまい、何事かと喋るのを止めた瞬間。 気味の悪い嫌な音と共に、自分の右側から赤い雨粒の様な飛沫を浴びて。 その発する言葉を完全に見失った。


その時、二人の姿すら暗くする程に、暗雲が天空に広がった。


然し、頬に雨を受けたと思った少女マキは、確かに見た。 落下して来た身体の上半身と下半身の間に入って、あの恐怖に染まった眼を持つ人の顔が在った様子を…。


さて、少女二人が帰ろうと向かう前の路地のアスファルトへと落下した、鈍く重たいもの。 それは、高層マンションの最上階から落ちてきた、人のバラバラ死体で在り。 強烈に路面へと叩きつけられれば、死後硬直も始まっていない死んだばかりの肉体である以上。 骨が砕けて、内臓や脳ミソが飛び出て。 周囲に血と共に飛び散ってゆく。


「・・・」


「・・・」


立ち竦む女子高生の少女二人は、飛び散った血肉で制服や顔を染めていた。


数秒・・いや、分の時を要したか。 女子高生二人がワナワナと震え出すままに、その落下したものを目で確認してから・・刹那の後。


「ぎゃああああああああああーーーーーーっ!!!!!!!」


二人の凄まじい絶叫が、雑居ビルやマンションが広がる都心郊外の辺りに、遠くまで木霊したのだった…。


そして、ポツポツと降り出した雨が、急激に激しくなり。


―コロ・・・コロコロコロコロコロ…―


叩き付けられた顔から飛び出した眼球が、アスファルトの上を流され転がった。


………………………………………………………………





      主な登場人物



Ⅰ.木葉 舜 (このは しゅん)


30歳を少し過ぎた地味目のスーツを着た男性の刑事。 一見するに優男な感じ、穏やかな目、色白の肌、程よく高い鼻の痩せ型な体つき。 刑事にしては髪が長く目元まで隠すぐらいに在り。 身長175前後の青年的な風貌をする。 警視庁捜査一課、篠田班に属し。 “イカサマをする刑事”とか、“まぐれ当たりの木葉”と云われる。 担当する事件にて、何故か思わぬ所から証拠を発見したり、採取・押収された遺留品から真実を掘り当てたりする。 他人が噂を立てるのは、その証拠品や詳言から隠された真実を理解する速さが時に人智を超える時が有る為、色々と言われてしまう。 然し、その実態とは、“霊視”と“交霊”の力を備え、幽霊から示される情報を元にして捜査しているからだ。 連続強姦殺人犯の‘広縞’に殺され、強力な怨念を持って怨霊として蘇った女性を鎮める為に、その後を追って捜査に奔走する。




Ⅱ.越智水医師(おちみず医師)


白髪を幾らか染めた灰色の髪を何時も正しくオールバック気味にし、七:三へ分ける50代の年輩男性。 身綺麗で、常に冷静で穏やかさを保つ外科医で、国立大学の准教授。 奥さん第一主義で在るため、異性には余所見をしないが。 彼もまた、霊視の能力を持つ。 木葉刑事とは数年の付き合いとなり、良きアドバイザーに居る。




Ⅲ.古川刑事(ふるかわ刑事)


鋭く細い目つきをし、柔剣道で鍛えた小太り姿の禿頭となる年輩刑事。 所属は、所轄の警察署に属する刑事だが。 捜査一課の木葉刑事とは、過去に何度か一緒に事件を解決していて。 本人は信じたくは無いが、一・二度ばかり幽霊を目撃してしまった事が在る。 定年も視野に見える年齢だが。 一人娘に対してだけは冷静さを欠き、周囲からも親バカと言われている。



Ⅳ.清水順子(しみず じゅんこ)


小柄な身体つきながらインテリ系の美女にして、性的に魅惑的な肉体美も併せ持った女性。 アラサーながら独身で、才色兼備と言われる程に精神科の医師としては将来を期待されている。 大きな瞳に、目元に黒子が涙の様に二つ流れて着き、透明感が見える処が男性受けする理由らしい。 越智水医師の教え子の一人で、師として、男性として越智水医師を慕っている。 今回、とても不可解な不審死を遂げた患者について、師の越智水医師を頼る事に成る。 その過程で知り合いとなる木葉刑事に、次第に惹かれて行く。



Ⅴ.佐貫刑事(さぬき刑事)


50歳前後の捜査一課の刑事。 無精ひげを良く生やし、煙草と食事が人生の楽しみという、普段から無気力な雰囲気を纏う人物。 然し、木葉刑事の叔父、《木葉 恭二》(このは きょうじ)を知る人物で。 幽霊を視る事が出来た木葉恭二に、嫉妬をする処が在った。 手柄を挙げられると警察庁の特殊な部署を与る鵲参事官に吹き込まれたが。 その本心を隠して、木葉刑事とコンビを組む。




Ⅵ.鵲参事官(かささぎ参事官)


木葉刑事、彼の亡くなった叔父の恭二が霊感を持って居る事。 そして、その能力を捜査に利用している事を知っている数少ない人物。 過去、木葉刑事の叔父で在る故人・木葉恭二と知り合いで。 悪霊と相討ち、死んだ恭二の事後処理をした。 悪霊と変わろうとする怨霊を倒せると見込む木葉刑事を護ろうと、補佐に佐貫刑事を付けたが。 最悪の場合は、木葉刑事を捨て駒にする事も辞さない覚悟を持つ仕事人間でも在る。



Ⅶ.木葉 恭二(このは きょうじ)


木葉刑事がまだ学生の頃。 都内の何処かでバラバラにされて亡くなった元刑事。 木葉刑事と同様に、強い霊能力を持っていたが。 甥っ子の木葉刑事の方が能力が強いと思い、育児放棄する両親を嗜めつつ見守っていた。 悪霊へと変貌し掛けた或る怨念を鎮める為に、刑事を辞めてまで捜し。 そして、命と引き換えに鎮魂をした。 鵲参事官の他、佐貫刑事や古川刑事など、警察庁・警視庁の古株職員とも面識が在った人物で在る。




Ⅷ.茉莉 霞 (かすみ まり)


‘特殊任命参事官’に就く鵲参事官の手足として動く、‘特殊警護班’(通称:チェイサー)に属する女性隊員。 厳しい訓練を受けており、尾行・捜査・護衛の全てを万能にこなし、鵲参事官の信頼を得る。 然し、木葉刑事に対してだけは、妙に同調する処が在り。 彼を監視・護衛する事で、始めて仕事に‘緩み’を知る事と成る。



Ⅸ.里谷 潤 (さとや じゅん)


警視庁警護課・寺嶋班に所属する護衛専門の捜査員。 木葉刑事と同様に、悪霊に因って怪我をしたが。 木葉刑事の病室に通う事で、事情を知り。 最終的には、木葉刑事の協力者に成る。




Ⅹ.古川 和世 (ふるかわ かずよ)


古川刑事の奥さん。 その、おっとりした性格は、言葉遣いからも感じられる程に性格の温和性や優しさを印象づける。 法律学者の権威として有名な人物の娘だが、古川刑事の警察官時代に彼へ惚れてしまい。 勘当同然の形で、古川刑事に嫁いだ。 過去に子宮癌を患い、子供は娘の詩織の一人だが。 木葉刑事には、息子の様な感じ方を持って接していた。




ⅩⅠ.古川 詩織 (ふるかわ しおり)


古川刑事の一人娘。 下手なアイドルなど顔負けの美少女で、クラブは総合運動部に入る。 父・古川の連れて来る刑事は、皆が目つきが怖いので。 中学生に成る頃までは、余り個人的な付き合いは見せなかった。 然し、木葉刑事と云う異質な存在を知り。 父の仕事の大変さを知る事と成り。 徐々に、法律を学んで検事に成りたいと、想う様に成る。



Ø.怨念/怨霊/悪霊 (葉月 美桜/はづき みおう、他)


最初の登場人物にて、初作品冒頭で犯人の広縞に因り強姦されて殺害された女性。 彼女の怨念を視れる越智水医師や木葉刑事が、必死にその怒りと怨みを鎮めようとしているが。 拒絶するかの如く、その捜索の手をすり抜けて呪いの念を通じて殺人を繰り返す。 発生時は怨念に囚われた霊体だったが。 広縞の被害者遺族を自殺から怨念として同化し七人ミサキへと変貌して力を強め、怨念から直接的な力を持った怨霊に変わった。 処が、広縞を殺害した事でその蓄積した荒ぶる怨恨の矛先を失い。 悪霊と云う、誰にでも牙を向く事が可能な領域に踏み込んだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る