青い目

庭のかたすみに腰をおとして髪飾りを見つめる。あの時砕け散ったと思ったのにここにこうして存在している。もしかしたらまだ、あちらに・・・・いや、それはないな・・・


だけど、この髪飾りを持っているとあの世界を感じるようになってきた。


僕自身、あちらを意識しているしあちらも僕を意識しているようだ。最近ではすぐそこ、壁の向こうにいると感じる。


そして四月一日を強く感じるようになっている。


僕は考えた。


そして神殿に行った。アレンに頼んで城から持ってきてもらった包みを開いて確認した。


俺は包みを勇之進の信託の板の前においた。そして願った。


四月一日として義務を果たしたい。手を貸してくれと・・・・


包みを魔法陣が取り巻いた。やがてそれは消えた。次の光は勇之進の刀だった。


光が収まった時、綺麗に修復された刀がそこにあった。



「これは・・・・神子様・・・あなた様はやはり・・・・」


「出来ればと思い、願ったけど・・・・自分でも驚く」


「四月一日の力と神殿の力がうまく作用したと思ってくれ・・・・そうしか思えない」


「神子様」




外にはアレンだけでなくレオ王子も待っていた。


僕は丁寧に頭を下げて挨拶をした。そしてアレンに向かって


「早く帰ろう」と言った。


「待て」とレオ王子が言うので、黙って次の言葉を待った。


「その・・いろいろ済まなかった」


「いえ、もう済んだ事ですので、気にしておりません」と言うつもりだったが、一番早く終わらせられそうな


「お気になさらず、殿下が謝罪なさることはなにもございません」と言った。


「いや、謝罪を」


「すべてお許しいたします」と迅速に答えた。


「あきらめろ」とアレンがそいつに言うのが聞こえたが構わず歩いた。




家に戻ると二人が改まった様子でやってきた。渡されたそれはハンカチに包んだ彼女の髪の毛だった。


それを髪飾りに巻きつけた。


「多分、もう一度夢の国に行くと思う。やりかたもなにもわからないがこちらも行きたいと思うし、あちらも呼んでいる。だから行く。必ず帰って来る・・・・時間がかかっても必ず・・・・」


二人の姿が霧に消えた。・・・・早くない?


あの日と同じ道だ・・・・彼女が現れたあたりを見るが、誰もやってこない。


あの広場に行くが誰もいない。彼女の部屋のある建物に近づくとドアが開いた。


同じ部屋にはいると既に荷物が届いていた。着替えと僕の好きな作家の新作・・・・


これはどういうこと?元の世界から取り寄せたの?元の世界に通じているの?


だったら・・・・帰りたい・・・・ふいに衝動が湧き上がった。帰りたい・・・・


母さんの墓参りに行きたい・・・あの家をもういちど見たい・・・・


僕は部屋を出ると長い廊下を走った。・・・頭の隅に廊下こんなに長くなかったよって浮かんだけど・・・・これは夢だから





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