14 また逃げるはめに
リルはヘンリーを避けるために町をでることにした。
マリアの店でベルトを受け取り代金を払った。高いとも安いとも感じなかった。
ただ言われた金額を払った。レオ王子を助けた時にお金をもらっていたので、案外、お金持ちなのだ。
これからは国境に向かって移動することにした。途中で寄り道したおかげで厄介なことになったのだ。
馬車を乗り継いでいけるのは、ありがたい。リルには馬車の切符が輝いてみえた。
リルは早めに馬車乗り場に行くとさっさと馬車に乗り込んだ。フードを深く被ってじっと下を向いて座った。
馬車が走り出した時、リルはほっとして息を深く吐いた。
リルが乗った馬車が町を出る頃、ギルドにある連絡がはいっていた。
神子が討伐の練習でダンジョンにやって来るが、騎士団が神子を守るために『救世主騎士団』を作り、レオ王子が団長にアレンが副団長だと・・・・
ギルドマスターは職務柄かなり正確な情報を持っていた。
神子は魔力が少なく、浄化能力もないと・・・・ダンジョンの訓練で魔力が上がるとは思えないが、神子が活動していることが大事ってことだと理解できているが・・・なぜ、ここに来るんだ。おまけに王子も一緒だとは。最悪だとマスターは頭を抱えた。
しかしマスターは気を取り直すと先発隊を迎える準備を始めた。
レオは召喚を後悔していた。一番いい時期まで待つように言われたのに、手柄をあせってやってしまった。魔法陣のなかに人影が二つあるのに気付いたとき、やったと思ったのだが・・・・
神子のワタヌキは威勢良くしゃべるがたいした事ができなかった。まわりの貴族も期待はずれと思っているようなのが気に食わない。
そしてひとめで心奪われた黒髪の青年には嫌われて、軽蔑された。
その上、青年は城からいなくなってしまった。レオとアレンは珍しく共闘して捜索をしているが、なんの手がかりもなかった。
「ダンジョンを立ち入り禁止にする必要はありません。それに報告が来ていますがなんでも森でギガネコが冒険者を襲ったということですが・・・・討伐できたそうですね。全滅を覚悟したときに新顔の冒険者が現れて皆が助かったと聞きましたが・・・・その冒険者を紹介していただけないでしょうか?」
ギルドマスターを前にアレンは書類を見ながらこう言った。
「あーーぁその冒険者は、少し前にこの町を出て行きました」
「出て行った?」
「はい、移動したと思います。最近現れませんから」
「・・・・そうですか?まぁ冒険者は気ままに移動だってことだな」
「そうです」
「行方を追うことは?いや、いい」
「できませんので・・・・」とマスターは念を押すように言った。
二人が打ち合わせを終えたのは一時間後だった。
アレンはイズミは攫われたのではなく、自分の意志で城を出たと思っていた。イズミは最初から城を出たいと言っていた。だが自分と関わってその気持ちを変えてくれたのではないかと自惚れていた。
自分に打ち明けて欲しかったが・・・・王宮の暮らしがいやだと言う気持ちはよくわかる。アレンも同じだから・・・・
明日、ダンジョンの下見に行っておくかな。
アレンは宿に戻るとソファにだらりと寄りかかった。
イズミのことを考えた。遠征から戻って部屋に行ったら残されていたのは果実水の染みだらけの服と靴。
夜会の時、やっと贈れた髪飾りはきれいに並べられていた。なにも持って行ってくれなかった。
異世界人を外国に出したくない貴族が国境の町で、やってくる者の顔を検分していると耳に入っている。違法ではないし、そいつがそうやって探してくれるのは正直ありがたい。見つかればその場で王家が介入する。その為に手の者を行かせている。
自分も神子のお守りが終わったら足を伸ばそうと思っている。
「イズミ」と呟いたアレンの頬を流れるものがあった。
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