第68話 女神降臨
「ぐあああーーー」
くそーー!!
治癒魔法を受けているが、両腕の骨折が出血すら止らねえ。
ガタン!!
「いてーーー、もう少し静かに走らせろ!!」
「はっ、コウケン様申し訳ありません」
「うむ、いやすまん。声を荒げてしまった」
こんな悪い道で、馬車をこのスピードで走らせれば、揺れるのは当たり前だ。
むしろよくやってくれている。
「た、大変です」
「どうした」
俺は、王都の防壁の上を見て愕然とした。
防壁の上に無数のスザクがいる。
「あ、あれが、すべてスザクなのか……」
一体でも、滅茶苦茶強いスザクがあの数。
「王都はもはや陥落しているのか。ウーリエへ向え」
ウーリエは魔王国の西部最大の城塞都市、恐らく王都の我軍の兵士達はすでに向っているだろう。
「コウケン様、見て下さい」
兵士の指の先を見ると、二十メートルはある防壁から、飛び降りる女の姿がある。
スカートをはいているのか、可愛らしい下着が丸出しになっている。
ドン!!
その女は何が起きたのか身投げをしたようだ。
いや、砂埃をあげながら、こっちに走ってきた。
「私の名前は、シュラ、コウケン様にお目通り願いたい!!」
何という美しい女性だ。
「俺が、コウケンだ」
し、しまった、何者なのかもわからんのに答えてしまった。
美しい女性であり、さっき下着まで見てしまったから、油断してしまった。
女は勝手に馬車に乗ってきた。
「そうですか。あなたがコウケン様ですか。フォリス様からこれを渡すように言われてきました」
女が渡してきたのは、真っ黒な液体の入った小瓶だった。
黒いだけでも不気味だが、まわりにまがまがしい黒い霧がまとわりついて、余計に不気味さをましている。
フォリスというのは、たしかスザクと一緒に来ていたあのかわいい少女か。
「これを、どうしろと」
「うふふ、飲んでください」
「ふ、ふざけるな、こんな不気味なものが飲めるかー!!」
「あら、どうしてですか」
「毒なら死ぬだろう」
「うふふふ、私はスザク十人と戦って、勝てる位の強さがあります。あなたを殺すだけなら、毒など必要としません」
な、なんだとーー。
あの化け物のスザクより強いだと、魔王は一体どれだけの戦力を持っているのだ。
しかも、この女、近くで見ればみるほど女神の様に美しい。臭いはないな。
「確かに、お前が言うことが真実なら……」
俺が、ぐだぐだ言っていたら、女神が蓋を開けて一口飲んだ。
「きゃあああああーー」
「だ、大丈夫かーー!!」
「うふふふ、冗談です」
なーー、なんだこの女ーー!!
この状況で、何でこんなことをするんだー。
「どうぞ」
女神の様に美しい笑顔で進めてくる。
俺は思わず、女神が口をつけたところに口をつけて飲んだ。
味はエリクサーの味がする。
「こ、これは……」
液体を口に入れ、喉を通った瞬間、怪我が治り体調まで万全になった。
「シュドウ! ここにエリクサーを運んで下さい」
シュラという女が何も無いところに声をかけたら、馬車一杯に小瓶が現れた。
「なっ……」
俺が驚いていると。
「怪我をしている兵士に飲ませてあげて下さい。次はウーリエで会いましょう。フォリス様からのお言葉です」
そう言うと、シュラという女神が、馬車から飛び降りた。
飛び降りた時、少しだけスカートがめくれ、下着がのぞいている。
女神はそのまま姿が見えなくなるまで見送ってくれた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます