第48話 魔王軍
やはり持つものは人脈ですね。
反乱軍討伐隊の兵士枠には入れませんでしたが、補給隊の荷物運びに紛れ込ましてもらうことが出来ました。
商会は、チッカさんとシュカさんスザク十人で守ってもらうことにしました。
スザクは、倉庫で助けた女性達の姿にヘンシンしてもらい、全員メイド姿です。
魔王都の中央広場の集合場所に、約束時間に会わせて出かけたら、すでに大勢の人が集まっています。
「おい、さっさと運ばねえか」
「てめーー、俺たちを誰だと思っているんだ」
補給隊の隊長に、凄んでいる人がいます。
腕をまくって入れ墨を見せているようです。
「ひっ」
あららら、小さく隊長が悲鳴を上げました。
どんな入れ墨かと思って目をこらしたら、どこかで見た入れ墨です。
双龍の入れ墨。
死刑にならずに、こんなところで懲役のようですね。
「おはようございます。あなた達に、こんなところで出会うとは、不思議な縁を感じます」
フォリスさんが丁寧にあいさつをした。
「ひっ、ひーーっ」
人相の悪い人達が、悲鳴を上げて尻餅をつきました。
「な、なに、その態度。失礼しちゃうわ」
フォリスさんが可愛い顔して、ちょっとむくれた表情をします。すげー、がわいいんだけど……。
「か、勘弁して下さい」
「勘弁してください」
「ゆ、許して下さい」
「許して下さい」
この人達は、恐さしか感じないようです。
もう、頭の上で手を合わせている人までいます。
「ちゃんと、隊長さんの言うことを聞いて、一生懸命働けばなにもしませんよ」
「わ、わかりました」
「わかりました」
全員がわかってくれたみたいです。
「あ、あのう、あなた達は何者なのですか」
「うふふ、隊長さんの下で働かせていただく、下働きのものです。よろしくお願いします」
隊長さんが不審がって聞いて来ますが、フォリスさんははぐらかしました。
「おい、お前ら、さっさと荷物を積み込め、じきに出発だ」
隊長さんがちらちらフォリスさんを見ながら、人相の悪い男達に命令をします。
隊長さんの後ろでフォリスさんが、天使のようなとても可愛い笑顔をしています。
その顔を見て人相の悪い男達は、テキパキ働き出しました。
魔王都を出ていくつかの町と村を抜け、二日目に大きめの城塞都市に付き、物資の入れ替えをしました。
ここで五千人ほどの兵士と合流し、再び行軍がはじまりました。
草原の中を3日ほど歩くと、荒れ地になり、あたりは黄色い地面だけになります。
そして、補給隊に待機命令がでました。
ここまでの行程、隊長さんのはからいで、随分楽をさせてもらいました。
僕たち七人、フォリスさん、ランロン、コデルさん、リコさん、クザン、シュラさんは、兵士の背中を見えなくなるまで見つめていました。
簡単な昼食をとっていると、喚声が聞こえてきました。
それが、だんだん近くなると、早馬が来て
「全軍、撤退、撤退だーー―っ」
「うわあーーーーっ」
撤退の声を聞くと、補給部隊の兵士と、人足が悲鳴を上げて逃げ出しました。
「に、逃げましょう。危険です。逃げましょう」
リコさんがあわてて、僕の手を引っ張ります。
僕がにこりと笑って。
「大丈夫です。落ち着いて下さい」
たったこれだけで、リコさんは頬を赤らめて落ち着きを取り戻してくれました。
「そこの岩の上の方が安全ですね。移動しておきましょう」
荷車四台分ほどの岩があったので、その上に移動しました。
移動を済ませるとすぐに砂ボコリと共に騎馬隊が走ってくるのが見えました。
「おい、お前達何をしている。危険だ、逃げるんだ。前戦は崩壊した。我軍の敗北だーー」
言いながら走り抜けました。
その後、騎馬隊が横を走り抜けますが、皆泣きそうな青い顔をして逃げて行きます。
リコさんの手が再び震え出しました。
リコさんの正面にまわって、しっかりと目を見て
「大丈夫です!!」
きぜんと言ってあげました。
リコさんの顔が真っ赤になり、ペタンと座ってしまいました。
そして、両手で僕の手を強く握ってきました。
相当恐かったようです。
「ぐわあああーー」
「ぎゃああーーー」
赤黒い、鎧を着たような体が、ぴょこぴょこ兵士の間から見えました。
「スザク……かな?」
僕がつぶやいたら、スザクはそれが聞こえたのか、恐ろしい勢いで岩の下に駆けつけます。
そして、何十周も岩のまわりを回り始めました。
「おお、蛾のさなぎのゴーレムか」
コデルさんがつぶやきます。
違いますよー、スザクです。
「可愛いもんじゃのう、犬のようにはしゃいでおるわ。蛾のさなぎのゴーレム」
そのうち、スザクがどんどん集まってきて、大変な事になりました。
「こらーー、お前達、勝手に行動するなー―」
シュザクが駆けつけました。
でも、変です、何だか可愛い服を着ています。
あまりにも速く走ってきて急にたち止った為、スカートがまくれ上がっています。
――だ、だれですか、シュザクにパンツをはかせたのわーー
「はっ、ア、アスラ様。スザクはアスラ様を見つけたのですか、それでは命令を忘れてもしょうがありませんね」
「シュカイちゃーーーん、あまり離れちゃーーだめだーー」
「やあ、チョカイさん」
「おおーー、魔王様、こんなところで何をしているのですか」
「ふふふ、荷物運びを少し」
「な、なにーーっ。魔王様に荷物運びだとーー。皆殺しにして参ります。ごめん」
「チョカイさん、もう良いです。皆がそろうまでここにいてください」
僕は、ここに魔王軍が集まるのを待つことにした。
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