魔王
覧都
第1話 追放勇者
「ライミングブレーード!!」
難攻不落、攻略不可能と呼ばれた世界最大のダンジョン。
一五〇階層のラスボスを一刀両断した。
ボスの一抱えもある魔石と、宝物庫のお宝を魔法で収納していると後ろから声がした。
「はーーっ、馬鹿じゃ無いの、あれほどラスボスは一撃で倒さないでって言ったのにー。私達にも攻撃させてくれないと、強くなれないじゃ無いのよ」
チーム天神の五人のメンバー、その中の一人、魔女のパレスが激怒している。いや、良く見ると全員激怒している。
だが、このラスボスは強いから、お前達の攻撃力程度では、攻撃が通らんぞ。
だから倒してやったんだがなー。
「てめーは、いつもそうだ、独りよがりで、我がまま、自分勝手、そして我がままだ」
戦士のロドンだ。
こいつは脳筋だなー。我がまま二回言ってるし。
「あなたは強すぎです。だからもう、国王様も、貴族も全員気持ち悪がって嫌っているわ。もちろん私達全員嫌っていますわ」
パレスが本当に嫌そうな顔をしている。
いや五人とも嫌な顔をしている。
そうなのか、今日だってお前達がケガをしないように、敵モンスターを全部狩ってやったし、ボスだって倒してやったのに。
「そうだったのか、知らなかった。そんなに嫌われていたのか。じゃあここで、チーム天神は解散でいいのか」
「いいに決まっているだろ、こっちからくびだよ。くそ勇者!!」
「何が天神の勇者だ、てめーなんか我がまま、あほ勇者だ!!」
「二度と俺たちの前に顔を見せるなー。馬鹿勇者!!」
「だいたい、ラスボス倒してレベルアップもしないなんて、気持ち悪いんだよ。キモ勇者」
さすがに神官だけは、悪口を言わなかった。
だが、顔は怒りに歪んでいた。
「そうか、わかった。じゃあな」
俺は怒りより情けない気持ちで一杯だった。
移動魔法でダンジョンの外に出ると少し座り込んだ。
「強すぎて気持ち悪いかー」
しばらく考えて、俺は弱くなる決心をした。
「昔、助けたエルフの長老が
聞いた時には必要無いと思っていたけど、覚えていて良かったよ。換骨奪胎の神殿とは、レベルは一にもどって、ステータスは十分の一になる代わりに、超上位職になることが出来る神殿のことだ。
換骨奪胎をして、レベルアップをしなければ弱いままでいられるはずである。
俺は、換骨奪胎の神殿を目指し移動魔法を発動した。
深い森の中に移動した。
ここから先は、徒歩でしか行くことが出来ない。
俺にとっても未知の場所だからだ。
「おい、ここから先は行かせる訳にはいかねえ。三百六十度回転して帰っていきな」
「さ、三百六十度って」
俺が驚いていると。六人のトカゲ頭の人間に囲まれていた。
「ばっきゃーろー、三百六十度じゃあ、そのまま行ってくれって、言っているようなもんだろう」
一番強そうな、トカゲ人間が怒った。
おそらく隊長なのだろう。
「なあ、黙って行かせてくれないか。換骨奪胎の神殿に行くだけだ」
俺は、隊長に頼んだが、隊長は笑い出した。
「はーはっはっ、行ってどうする。あそこはレベル百以上なければ入ることが出来ねえ。わかったら帰りな」
「仕方がない、力ずくで通らしてもらう。まあ強くなりたくないので命だけは助けてやるよ」
俺は、強そうな奴から顔を平手打ちした。
パーンという綺麗な破裂音と共に五人のトカゲ人間が吹き飛んだ。
一番弱そうな一人だけは、攻撃しないで残してやった。
「た、隊長、大丈夫ですか。うわあ、し、死んでいる」
「あっ」
俺の体が光りレベルがあがった。
さっきのダンジョンの経験値とこいつらの経験値で上がってしまったようだ。
「お、お前、約束が違うじゃねえか」
「しらねえよ。お前らが弱すぎるんだよ」
「ばかな、俺たちはドラゴン族の戦士だ。弱いはずがねえ」
「トカゲじゃねえの?」
「き、き、きさ、きさまーー」
トカゲ人間が、激怒している。
また、怒らせてしまった。
「ゆ。ゆるさねー!!」
トカゲ人間が怒って、殴りかかってきた。
「待ちなさい!!」
森の奥から声が聞こえた。
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