第28話 建前と本音のオンパレード 2
勤労動員されている女学生たちの会話が、ひとつ、出て参ります。
そこでの、とある女学生の「将来の夢」。
それを聞かれたおねえさん、こんなこと、言うねん。
早く結婚して、子どもをたくさん産んで、お国のために貢献します。
これ、本音と言えるかな?
というのが、わしの思うところや。
いつ終わるとも知れぬ戦時下、一方では、「産めよ増やせよ」などと言った標語が出回っておったのね。
そういうときにこそ、「家制度」から派生した概念が、世の中に走り回るわけや。
まあ、男女差とか学歴などなど、いろいろな要素でそのあたりは変わるけど。
確かに、その彼女、家制度の下の大家族といったものとの「相性」は、私なんかよりはよかろう。
それはともかくとしても、彼女のそれが本音だとしても、それが叶うような状況下なのかという問題が、あるわあな。
ある意味、「かなわぬ夢」に近い側面も、ある。
その一方で、本当はそんなことよりももっと、自分のしたいことがあるのかもしれないわけよ。
それを言うのもはばかられるから、そんな「ありきたり」なことを言っている。
その可能性も、捨てきれん。
そうなると、彼女のその弁は、典型的な「建前」ってことになるわな。
いずれにせよ、建前か本音かというのは、案外、読み取りにくいものであり、それと同時に、状況によって同じことを同じ人間が言ったとしても、そのどちらかで固定される性質のものでもないということに、成りましょう。
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