メスガッキー大編隊 と 末妹レム子の天鬼族再旺紀 ✧ 超科学ハーレムと大魔災チートが交差する時、SF作家スタニスワフ・レムも気分超常な物語は始まるっちゃ。

十夜永ソフィア零

序章 101体の幼な妻とのボクノンキ農場  ※5巻1章

3億円事件への介入者たち

第1話 ♠気♠ 待合室の静やかな空気はかく破られし

 今日は17歳の誕生日。

 夜明け前の越谷市街で、僕はいつも通りに新聞を配達した。

 学校に向かう妹2人を見送ってから、3時間ほど仮眠。


 昼前に家を出た。外は秋晴れ。

 久しぶりの武蔵野線で向かう先は、浦和の埼玉りそら銀行。



 午後1時に埼玉りそらの本店待合室に入った。山田暢気のんき名義の僕の口座に、振り込まれたお金の件を話しあうため、だ。


 今時珍しい新聞配達少年の僕。月の稼ぎは12万円くらい。


 そんな僕の口座に突如、海外から大金が振り込まれた。

 しかも、麻薬取引なんかで有名だったりする国から。

 銀行としては事情を把握したい、ということだろう。

 

 お金の振込元は怪しくない。世界最大級のVRMMO、シークレタート・フォーラ(S.F.A)の運営会社メタ・フォーラ社からの振込なのだから。


 僕の口座には、これまでもメタ・フォーラ社からお金が振り込まれている。

 オヤジのアカウント「モンクロア」を引き継いで以来、S.F.Aシークレタートフォーラ上で、僕は日々小金を稼いできた。

 仮想世界での代行便利屋バイト、という奴だ。多い日は数千円ほどの稼ぎ。

 その一部をりそらの口座に入れ生活費に回してきた。振込額は合わせて三十万円くらい、全て日本法人からの振込だった。



 今回の振込はメタ・フォーラ社のメキシコ法人から。

 金額は、日本円換算で3億円……まぁ、銀行は警戒するよな。

 

 もちろんS.F.Aシークレタートフォーラ上で正当に得たお金なのだけれども――しがない通信科高校生にして新聞配達少年の僕には、説明しにくい桁の金額だ。

 家のお金とも説明しにくい。

 一昨年の猛暑の日、エアコン工事に走り回っていたオヤジの元気は心臓発作で急死してしまった。その時の死亡保険金で一軒家のローンは完済されたとはいえ、母子家庭。しかも、母の華穂はといえば、秘境カメラマン仕事でアマゾン川に向かった二年前から行方不明。

 僕の他の家族といえば、二人の妹、中2の暢乃華ののかと小3の華音かのんだけ。



 なので、できる限り目立たないように、少しずつ出金したかった。

 が、メタ・フォーラ社から、マネロン防止の観点から一定額以上の仮想マネーは現金化させる規則なのだと通知があって――少し前に、「3億円が着金しましたが」と銀行から連絡があり遂に本店にお呼ばれしてしまったという次第。


 どうしようと悩む僕に、お隣さんの天神あまかみ真由美さんが相談にのってくれた。


 県立大で臨床検査技師を目指している真由美さんは、成人済の19歳。加えて、天神あまかみ家のおばあちゃんも今日は同席してくれる予定。

 

 天神あまかみ家は地元越谷市の名家。上間久里天神かみまくりてんじん社のおやしろはじめ、駅前駐車場などの所有地の資産は3億円なんて軽く超えているはず。

 天神あまかみのおばあちゃんは、上間久里天神社の宮司、つまりは神社の経営者(真由美さんの方は、巫女見習い……とてもお似合いだ)。所有地地や建物などの関係で、りそら銀行ともつながりがあるはず。

 なので、天神のおばあちゃんに同席してもらえることはとても心強い。


 2人は1時半に到着するとのこと。

 それまでは慣れない銀行の待合室に一人。

 やはり緊張はするものだ。



 ピンポーンとベルが鳴った。

 受付のおねえさんの声が聞こえる。

「とある乙女座超銀河団さま。とある乙女座超銀河団さまぁ」

 

 (何?)と、思わず声のした方を見てしまう。

 

 すると、淡紅色の着物姿の少女が、静静しずしずと受付に向かっていく。

 その後ろをお面をつけたセーラー服姿の少女が続く。

 お面というか、能面という奴か。


(銀行に能面をつけて入るって?――女子だと許される、のか?)

 

 いやそれよりも、呼び名の方だ。

 乙女座は星座。超銀河団は銀河の何か? 

 まぁ、超ギャング団とかでないから……いいとしよう。


 能面はハロウィン、なのか?!

 

 なんて思いながら二人の背中をぼうと眺めていると、着物姿の少女がくるりと振り返った……なぜ、まっすぐに僕を見る?

 

 キレイな顔立ちの女子……少し古風だろうけれども……と思いつつ、サッと目をそらした。


 いや、銀河団なんて団体はわけわからない。

 今日の最優先事項は3億円が僕のお金と確定させること。

 なにしろ3億円あれば、妹達を通学制の高校や大学に行かせることだって余裕なのだ。


 (美少女なんて、こんな時に警戒すべきリストの最上位……)


 そう自分に言い聞かせていた時だった。「ノンケくふぅん」という奇声と共に僕は後ろから抱きしめられた。


「危なかったぁ~ん」

 ――聞き覚えある声?



「うふふ~ん。お待たせぃくふぅん」

 声の主は僕の頬に頬をすり寄せてきた。

 

 頬と頬がぷにっと重なると共に、背中に柔らかな感触を受けて……僕はついに認識した。

 ふわりと漂う良い香りの声の主が、天神あまかみ真由美さんであろうことを。

 

「あんむっ」

 甘ったるい声と共に僕の耳たぶが甘噛みされる。


 頬と耳たぶから流れ来る電流に痺れつつも、この声の主は真由美さんてはない別の何かなのだとの思いが募ってくる。


 後ろから「あらあら」という天神あまかみのおばあちゃんの声が聞こえた。


 天神様の神社の境内を掃き清めている時の清楚な真由美さんはどこに行ってしまったのか。

 てか、ここは、りそら銀行本店の待合室。

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