おじさん構文に注意を

野口マッハ剛(ごう)

サスペンス系ホラー

 三人組の男がひとりの男のあとをつけている。三人組の男はスーツに革靴である。ひとりの男はスマホ片手に歩いている。夏の夜である。


 蒸し暑い夏の夜である。

 アパートの一室で龍太と有紀が一緒に住んでいる。母校の中学校は同じで、二十三歳である二人。

 有紀が龍太に見せたスマホの画面。そこには、こんな文章メッセージが。

「有紀ちゃん😊 今日も暑かったねー☺️ おじさん汗だく👕💦 有紀ちゃんも汗をかくのかな?☺️」

 そこには、おじさん構文が。わけを聞くと、内緒で遊び心でマッチングアプリを使っている有紀。

 龍太は当然怒る。有紀は本気ではないと龍太に説明する。


 龍太が相手の男の写真と名前を見て、母校の先生じゃないかと有紀に言う。有紀はそれに気付いてびっくりした様子である。

「有紀ちゃん😊 おじさん汗だくだよー👕💦 有紀ちゃんの汗って、どんな香りがするのかな☺️」

 正直に言って気持ち悪いおじさん構文である。


 有紀が母校の先生、高田先生と思われる男に、あたしのこと覚えていますか? と送る。

 すると、おじさん構文でこう返って来る。

「覚えているよ☺️ おじさん、記憶力はいいんだよ😃 有紀ちゃん、今日は汗をかいたかな☺️💖」

 相変わらず、気持ち悪いおじさん構文である。


 龍太がアルバイトから帰ると有紀は不安がっている。おじさん構文のメッセージを龍太に見せる有紀。

「有紀ちゃん😊 おじさんと一夜の火遊びをしない?☺️ ウヘヘ💖」

 有紀は泣いている。

 龍太はイライラしている。母校の先生がこんなことを言っていいのかと龍太は思う。


 有紀のスマホにおじさん構文のメッセージが。

「有紀ちゃん😊 今日は返事をくれなくておじさんさびしい😭 それとも、恥ずかしいのかな☺️」

 怒るか無視するか龍太は考える。

 おじさん構文のメッセージがしつこい。

 怒る龍太は有紀の代わりにメッセージを返したのだ。すると。

「あれー😵 有紀ちゃんの彼氏?🤔 でも、おじさんはだまされないぞ✨ 有紀ちゃん、かわいいねー☺️💖」


 龍太は有紀の友だちから聞いた情報だと、母校の先生、高田先生は死んだらしい。

「有紀ちゃん🤔 おじさんのことをどう思っているのかな☺️💖 好き?🤔 嫌い?😭💔 おじさんは好きだぞ😃💖」

 それじゃあ、有紀のスマホに送られる、このおじさん構文は誰から?


 怯える有紀。

 どうして死んでいる人物からマッチングアプリのメッセージが?


「有紀ちゃん😊 早く会いたいね😃 有紀ちゃんは恥ずかしいのかな☺️💖 おじさんは早く会いたい💪」

 ブロックしてもいいが、有紀のスマホに送られるおじさん構文の正体や物事を知りたくなった龍太。好奇心が勝ってしまう龍太。


 高田先生は殺されたらしいと有紀が龍太に話した。その言葉に龍太は言葉を失う。おじさんは誰なのか?

「ウヘヘ💖 有紀ちゃん、早く会いたい🎵 いつ空いているかな☺️💖」


 殺人事件?

 おじさんは誰なのか?

 龍太と有紀は、おじさんと直接会う約束をする。

「有紀ちゃん、彼氏を連れて来るの?🤔 いいね~☺️ ウヘヘ💖 会おうね~😃💖」


 夏の夜の駅前の街である。いろんな人が行き交う。夏の夜の駅前の街のおじさんとの待ち合わせである。

 おじさんはいっぱい居る。

 どのおじさん?

 龍太と有紀は、見知らぬおじさんと目が合う。


 おじさんはメッセージを送ってくる。

「今どこに居るのカナ?🤔 服装をオシエテくれると嬉しい😃💕」

 それで、こちらの服装を教えるメッセージを送った有紀。ニヤニヤ笑う見知らぬおじさんがこちらにやって来る。ヤバいと思って逃げる龍太と有紀。追いかけてくる見知らぬおじさん。


 警察に通報しようとするも、追いかけてくるので出来ない。後ろを見ると刃物を片手に持っているおじさん。


 路地裏に追い込まれる龍太と有紀。

 絶体絶命である。


 そこに、スーツ、革靴の三人組の男たち。

 三人組の二人がおじさんを取り押さえる。

 三人組の一人が龍太と有紀に、刑事です、と名乗った。


 木戸勇二事件、おじさんは木戸勇二と判明。

 木戸は高田先生を殺してマッチングアプリで複数の犯行に及んでいた。


 通称マッチングアプリ事件は現行犯逮捕。

 龍太と有紀は安心している。

 事件の理由は、まだ明らかではない。容疑者の動機等々、これからわかることだろう。


 マッチングアプリの先生になりすましていた木戸のアカウントから。

「またアオウね😃💖 いつ会えるカナ?🤔」

 と、おじさん構文が。

 死んだはずの先生から?

 おじさん構文に注意を。

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