第52話 ドラゴン研究者
俺たちのチームが七帝剣武祭の代表に決まって、校内ではちょっとした有名人になった。
最初こそ俺たちに負けた3年生たちから恨み節などもあったが、いざ剣武祭が近づくと、学校の代表だ――みんな俺たちのことを、心から応援してくれた。
こうなりゃ、絶対に他校に勝ってみせるしかないな。
七帝剣武祭本戦まではまだ、数日の時間がある。
俺はその間に、調べ物をすることにした。
剣武祭の準備やらなんやらで、学校の授業も少なくなっている時期だしな。
ちょうどいい。
俺は学校にある図書館で、龍のことについて調べてみた。
「うーん、どれもトカゲについてのことしか書いてないなぁ……」
俺が知りたいのは、アイリのような本物のドラゴンについての情報だ。
そもそもアイリがなにものなのかとか、ドラゴンの歴史とかについて。
だが、どの書物にもアイリの名前は出てこないし、それに準ずるようなドラゴンの話ものっていなかった。
どれもこれもトカゲに関する、既知の情報ばかり。
そこで俺は、図書館ではなく生の最新情報をあたることにした。
この学校には、ドラゴン研究者なる人物がいるそうだ。
24歳ほどの年齢で、緑色のポニーテールに、赤のメガネをかけているその女性は、サテナといった。
俺はサテナ先生の研究室を訪ねる。
「あの、ドラゴンについて知りたいのだが……」
「君! ドラゴンとはいいところに目をつけているね!」
サテナはドラゴンには目がないと有名な人物だった。
だから俺はそれなりに期待していったのに……。
サテナに尋ねるてわかったことは、これまたトカゲのことだけだった。
「あの……俺はトカゲじゃなくて、ドラゴンのことが知りたいのだが……」
「なにを言っているんだ? これがドラゴンじゃないか! トカゲって君……」
サテナにあきれられてしまう。まったく、あきれたいのはこっちのほうなのだが。
「ドラゴンってのはもっとこう、魔力もこれくらいで、特徴は……」
俺はサテナにアイリに関する情報を伝えた。
トカゲとドラゴンでは、明らかにものがちがうのだ。
しばらく俺が話すと、急にサテナの目の色が変わった。
そして、俺の言葉を制止する。
「きみ……まって、その情報、どこで知ったんだ!?」
「え……?」
「今君が話したのは、始龍のことだね」
「始龍……?」
たしか、アイリもそんなことを言っていたような気がするな。
始龍だけがドラゴンで、あとはトカゲだというのが俺の認識だが……もしかして間違いだってのか?
「なぜ君がそんなことを知っているんだい? 始龍に関することは、まだ学会でも未発表で、一部の人間しかしらないトップシークレットのはずなんだけど……」
「それは、俺がその始龍に育てられたからだろうな。親のことを知ってるのは当たり前だ」
「はっは……また君は馬鹿な……」
言いながら、サテナの目線が俺の龍の紋章にいく。
そしてその紋章を一目みるや、サテナはびっくり仰天、驚きのあまり倒れた。
「なななななな……これは……、始龍の紋章……!? どうしてこれを君が……!?」
「知っているのか……?」
「始龍遺跡にも同じものが描かれていた……。というか、これも機密事項なはずなのに……。まさか、入れ墨やいたずらの類じゃないし……これは……本物……!?」
「本物に決まっている。これはアイリからもらった、絆の証だ」
俺は服をまくって、龍の紋章を強調してみせた。
サテナは興味津々に、食い入るようにそれを見る。
「間違いない……これは本物だ……! き、きみの身体をよく見せてくれ!!!! 君はなにものなんだ!?」
「あ、ちょ……っ」
サテナは興奮した目つきで俺をみると、いきなり襲い掛かってきた。
俺の服を脱がせ、絡めとるように体をまさぐってくる。
「おいなにをする……!」
「ふふふ……きみの身体を隅々まで検査する……!」
「うわああああああ!」
いつもは女性をせめる側の俺だったが、今回ばかりは襲われてしまうのだった。
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