第46話 修行
七帝剣武祭に向けて、俺はライゼたちを鍛えることにした。
まずは魔法の基礎から叩き込んでやるか。
「よし、ライゼ。今日はまずは各属性の基礎魔法からマスターしようか」
「え……待ってくださいレルギア様。なにをおっしゃっているのですか……?」
「え……?」
「魔法の属性は、それぞれ生まれつきもっている1種類しか使えないはずです」
「そうなのか? 俺は全属性使えるけどな」
俺がそう言うと、ライゼとティナは頭にはてなをうかべた。
「ま、まあ……レルギア殿がそういうのならそうなのだろう……。もう私はなにも驚かない……」
「いいか? ようは、属性が1つしか使えないってのは、変なクセがついているだけなんだ。一からキチンと魔法を学び直せば、そんなことはなくなる。まあ、そのクセを見るためにも、二人の今の属性を確認しておくとするかな」
「水見式ですね」
「そうだ」
水見式――というのは、そのものがどの属性の魔法に適正があるのかを調べるものだ。
俺はこの学校に入ってから初めてしった。なにせアイリも全属性使えたし、関係なかったからな。
水見式は、コップに水を入れ、そこに魔力を流すことで、それによって生じる変化を見る。変化のしかたによって、どの属性かがわかるわけだ。
例をあげると、氷属性なら水が氷る。炎属性なら、水が干からびる。
ただ、この水見式からなる魔法の属性理論は、俺に言わせれば間違いだ。
どんな属性に適正があろうが、そのクセを修正さえすれば、全属性が使えるようになるはずなんだ。
「ライゼは雷、ティナは炎が得意みたいだな」
「っていうか……それしか使えないはずですが……」
「いや、練習すればできるよ」
そもそも、感覚で魔法を使っているから、そのようなことになる。
魔力の性質変化という基礎からやれば、各属性にも問題なく応用できるはずだ。
「じゃあ、属性魔法の前に、まずは基礎練をやってもらおうか。魔法の性質変化……をやってもらう……と言いたいところだが、それもどうやら難しそうだな……」
「魔力の性質変化なんて、レルギア殿以外にできる人がいるとは思えないな……」
「じゃあ、まずは魔力を練って、それを移動させたり集中させたり、基本的な魔力操作からいこうか」
「魔力操作……そんなことまでできるのか……」
こういったことは、どうやら現在の魔法体形では教えていないらしい。
呪文をとなえて、決まった魔法が使えればいいというスタンスなんだろうな。もったいない。
俺のように、そもそもの魔力を操作したり、性質変化させたりできるようになれば、オリジナル魔法だって自由自在なんだけどな。
「まずは魔力を練ってみてくれ」
「こうですか……?」
「そうだ。それを、じゃあ試しに、目の周りに集中させてみてくれ」
「そんなこと……やったこともありません」
だが、俺の手本通りにやってみると、意外とライゼは上手くできていた。ティナのほうは……正直まだまだ練習しなきゃダメかな……。
「すごいです! なんだか目がよくなった気がしますね」
「その調子だ。魔力には、基礎能力を高める効果もあるからな」
つまり、こういうこともできる。
俺は、自分の右腕に魔力を集中させた。
「ほら、これで殴ると……」
――ズドン!
俺は近くにあった適当な岩をパンチで砕いてみせた。
「すごいです……! こんなことまで……!」
例えばだが、他にも、足に魔力を集中させることで、速く走ったりもできる。
魔力とは、魔法を発動させる以前に、そもそもそういうものなのだ。
「よし、ライゼは筋がいいようだから、次はさっそく性質変化もやってみようか」
「はい……!」
「ティナはまださっきのを練習しておけ」
「うう……」
俺はライゼに向けて、性質変化の詳しいやり方を説明する。
そして、実際に目の前でお手本を見せる。
「まだ5大属性への性質変化は難しいだろうから、まずはこれだ。ゴムとガムの性質を魔力に付与してみてくれ」
「ゴムとガムですか……やってみます……!」
俺は目の前で、魔力を手でいじくって遊ぶのを見せる。
魔力をゴムとガムの性質にして、くっつけたり、伸ばしたり、いろいろしてみせる。
これができるようになれば、他の属性や性質にも簡単に変化させることができるようになるはずだ。
この魔力の基本操作には、様々な必須の技術が隠されている。
俺も、アイリにさんざんこれをやらされたっけ。
「それができたら、今度は鎖の具現化をやるからな」
「うう……難しそうです……」
「大丈夫、ライゼならすぐにできるようになるさ」
実際、ライゼはものの1週間ほどで鎖を具現化させるまでに至った。
ティナはそこからさらに1か月ほどかかることになる――。
だが、これで一通りの基礎は教えたはずだ。
これで、まず他の奴らに魔法で後れをとることはなくなるだろう。
七帝剣武祭もこれなら勝てそうだ。
だが問題は、5人一組のチーム戦――あと一人をどうするかだなぁ。
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