第42話 無双【ざまぁ!】
イデオット王国とアルテミス王国のちょうど中腹に位置する山岳地帯。
彼らはそこに中継基地を定め、進軍を開始していた。
その連合軍の中には、あのドマス・イデオットもいた。
イデオット王国の王は、ドマスにこの軍を指揮させることで、経験と実績にしようと考えたのだ。
ドマスも乗り気だった。これを、あのレルギアに復讐する絶好の機会だととらえていた。
「はっはっは、今ごろローゼンベルク王国は焼け野原でしょうね」
将軍補佐の男が、若き将軍ドマスに話しかける。
男の名はガイアル。ドマスと同じ学校に通う学生でもあった。
ガイアルの家は、代々イデオット王国の貴族家庭で、ドマスには逆らえない関係性だった。
「そりゃそうだろ。なんていったって、禁術を発動させたのだから。いやぁ、さすがはアルテミス王国の大臣はすごい戦略家だ」
「禁術で首都を焼け野原にしたあと、タイタンで囲んで殲滅する作戦……いやぁ、みごとですね。それを我々がこうしてあとから駆けつけて、あとは残党を蹂躙し、我々の手柄とする。完璧な作戦です」
「わざわざ僕たちが特攻して命を削らなくても、禁術とタイタンの後始末をすればいいんだからな。他国には禁術のことは伏せて発表すればいい」
「人間相手に禁術やタイタンを使ったのでは国際非難はまぬがれませんからね。あくまで相手が魔王だからゆるされるのです」
そう、彼らの作戦では、禁術とタイタンである程度戦力を減らしたあとに、連合軍が突撃し、壊滅させるという手筈であった。
さすがの大賢者と呼ばれる人物であれど、禁術を防がれるとなどは、夢にも思っていなかったのだ。
彼らはしらない――禁術もタイタンも、すべての作戦が失敗に終わっていることなど……。
「非常事態の狼煙も上がらないことですし、このまま進軍すれば勝ちはみえてますね」
「はっはっは! 蹂躙が楽しみだ!」
余裕の表情で進軍する彼らの頭上に、突如として影がさした。
「なんだ……?」
ふとドマスが上を見上げると……。
そこには大量のドラゴンが空を埋め尽くしていた。
「ど、どどどどどドラゴン……!??!?!?」
◆◆◆
「お……あれは、ドマスじゃないか?」
俺は連合軍の中に、見知った顔を見つける。
そう、以前俺にちょっかいをかけていたあのアホのドマスだ。
まあイデオット王国の軍ってことで嫌な予感はしていたけど……まじかコイツ。
あれだけ俺にしてやられて、まだ勝てる気でいたのか?
「しかも……横にいるのはAクラスのガイアルか……?」
まさかこの二人が絡んでいるとは……。
あの二人のことだから、俺に対する復讐ができて一石二鳥だとかって思ったのだろう。
個人の力では勝てないとわかっているから、国ごとかかってきたのか?
まあ、国が相手でも俺は負けないけどな。
「よっと……」
俺は二人の眼前に、ひょいと降り立った。
急なことで、なにが起こったのかわからないという表情のドマスたち。
しばらく呆けて、その後大声をあげた。
「な、ななななな……!!?!? 貴様はレルギア……!?!!?」
「ようアホ二人」
「ふん、なんだか知らないが、そっちから出てくるとは都合がいい。こっちは5万もの軍勢なんだぞ! 前のようにはいかない! いけええお前たち! 全軍でかかれ! 魔王レルギアをぶっ潰すのだああああああああああ!!!!」
ドマスがそう命令すると、後ろに控えていた5万の軍勢が一斉に襲いかかってきた。
まあ、俺にとっては5万も一人も同じ人間だ。どちらにしろ、脆くて手加減が必要なくらいの相手だ。
「そうだな……。一撃で5万……葬ってやろう」
「は……? なにを馬鹿なことを言ってる……!」
「喰らえ――ギガ・メテオラ――!!!!」
俺は第15階魔法、永久の章――ギガ・メテオラを唱えた。
すると奴ら五万の軍勢の頭上に、巨大な岩石が飛来する。
――ズゴゴゴゴゴゴゴ!!!!
――ズゴゴゴゴゴゴゴ!!!!
――ズゴゴゴゴゴゴゴ!!!!
――ズゴゴゴゴゴゴゴ!!!!
――ズゴゴゴゴゴゴゴ!!!!
「な、なんだ……!? 幻覚か……!?」
「いや、幻覚ではない。本物の、
「そんな……バカな……!!?!?」
5万の隕石が、それぞれ5万の兵士たちの心臓を一瞬で貫く。
隕石それぞれの大きさは、小石くらいのものだが、そのスピードは音速だ。
さらに、隕石はすべてが賢者の石でできている。
殺傷能力は無限大。
「ぐああああああああああああ!!!!」「ぐああああああああああああ!!!!」
「ぐああああああああああああ!!!!」「ぐああああああああああああ!!!!」
「ぐああああああああああああ!!!!」「ぐああああああああああああ!!!!」
「ぐああああああああああああ!!!!」「ぐああああああああああああ!!!!」
一斉に、あちこちで断末魔の悲鳴が聴こえる。
もちろんこれでも手加減はしたつもりだ。
だが、実際に俺が放った魔法の中でも、今回のこれは最大の威力のものだろう。
それほど、俺は怒っていた。
彼らが禁術だとかいって、城に直接攻撃をしかけてきたことに対してだ。
もし俺があの場にいずに、禁術が直撃していれば、多くの民間人が死亡していた。
こいつらの命程度じゃ、安いくらいだ。
俺は俺の愛した女たちを、決して傷つけさせはしない。
「ふはは! 人がゴミのようだ……!!!!」
俺の目の前には、5万の兵士たちの死体が転がっていた。
ドマスとガイアルはまだ学生だし、まあ生かしておいてやってもよかったが……。
どのみち奴らは敗戦国、しかも無理やりな宣戦布告をしかけた、戦争犯罪者だ。
生きていても亡命したり処刑したり、ろくな目にはあわないだろう。
今後イデオット王国とアルテミス王国は、国際社会からは排斥されるな。
というかそもそも、その二国が後に残るのかすら疑問だ。
とりあえずこれで、すべての敵戦力はつぶした。
あとは戦後処理はすべてローゼンベルクに任せるかな。
俺は、また楽しい学園生活に戻るだけだ。
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