第38話 宣戦布告


 両親?もどきを森にポイーしたあと、せっかくなので俺はそのまま城に泊まっていた。

 翌朝、兵士たちが騒々しく廊下を行き来している音で、目が覚めた。


「なにかあったのか……?」


 俺は兵士に続いて、ローゼンベルク王のもとへ。

 王の間には、たくさんの兵士が集まっていた。

 どうやらただごとではなさそうだ。

 伝令係のようなやつが、前に出て告げた。


「王様! たった今、アルテミス王国とイデオット王国の連合軍より、宣戦布告されました……!」

「な、なんだって……!!!?」


 兵士たちがざわつき始める。あらかじめこの事態を知っていたのは、一部の将軍格や大臣だけのようだ。

 王もたった今知ったという顔で驚いている。


「そんな、正当な理由はないはずだ!」

「もちろんそうです……。しかし、相手はあのアルテミス王国とイデオット王国、話し合いはもはや通用しないでしょう……」

「むう……しかし、なぜ」

「申し上げにくいのですが……」


 と伝令兵は俺のほうをちらっと見た。

 俺は大丈夫だというハンドサインを王に送る。


「よい、話せ」

「は! それが、奴らはレルギア様を、魔王だといい、ローゼンベルク王が洗脳されていると、本気で信じ込んでいるようなのです……」

「なに……!? 狂っておる……」


 そういえば、アルテミス王国って、あのオブライエンが所属していた国だよな。

 スパイを消されたことを根に持ってるってことなのか?

 それに、過激な思想を持っている国だったはずだ。

 こういった凶行に出るのも、不思議ではない……か。

 イデオット王国ってのは、はぁ……あのドマスの国か。

 まあ、ドマスからしてバカ王子って感じだし、国のほうも大概だな……。

 俺があきれていると、王侯貴族の一人が声を上げた。


「ローゼンベルク王が洗脳されているなど、これはひどい侮辱ですぞ! しかも、大賢者であるレルギア様を魔王よばわりなど……」

「そうだそうだ! これは厳格に対応せねば……!」


 貴族たちのそんな声を受け、王はしばらく考えたあと……。


「ううむ、そうじゃな。宣戦布告を受けた以上は、こちらも迎え撃たねばならぬ。今すぐ戦の準備をしろ! いわれのない宣戦布告じゃ。戦後処理ではこちらの有利に働くじゃろう。遠慮はいらぬ! 徹底的に叩きのめせ……!」


 王は威厳のある声で部下にそう命じた。

 何人かの兵士が急いで部屋を出て行く。

 不安そうな声を上げたのは宰相だった。


「しかし……相手は野蛮な蛮国とはいえ、2国からなる大軍です。我々の被害も、そうとうなものになるかと……」

「ううむ……。そうじゃな……。いろいろと覚悟をせねば……」

「どうやら今回、他国からの支援も得られそうにはありません……。みな、自国がかわいいのでしょうな。相手は狂った国、手をだせば、なにをされるかわかったものじゃないですから」

「そうじゃな。禁術にも手を出してくるやもしれん……。こちらも、国全土に防御結界を張っておかねば……」


 などと、どんどん話しが進んでいく。

 話をきいている限り、どうやらこちらの状況としては、あまり芳しくないようだ。

 静まり返った部屋の中で、俺は静かに手を上げた。


「あのさぁ……」

「む……? な、なんでしょうかレルギア様」

「その戦争、俺が参加しても構わない……?」

「れ、レルギア様が……!?」


 宰相は目を丸くして驚いた。

 しかし、どこか嬉しそうだ。


「だって、話をきく限り、俺のせいもあるっぽいし……。それに、ライゼの国が脅かされるのを黙ってみているわけにはいかない。この国は俺も大好きだしな。孕ませたい女もまだまだいっぱいいる」

「レルギア様……お、お力を貸していただけるのですか……!?」

「ああ、もちろん――」


 そう言った瞬間だった。

 窓から、とてつもない閃光が、室内に飛び込んでくる。

 それとともに、轟音。

 振動。


 ――ズドーン!!!!

 ――ドガがガガガ!!!!


「しまった……! 禁術をつかいおったか……!!!? まだ防御結界が……!!!!」

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