第33話 エリクサー!?
「さて、それではみなさんの作ったポーションを見せてもらいましょうか」
教師がそう言うので、俺は真っ先に前に持って行く。
途中で鍋を離席してしまったからな。どうせ俺のポーションは出来も最悪だろう。
完全な失敗作だ。あとで出して恥をかくくらいなら、先に評価をもらったほうが、あとのやつらもやりやすいだろう。全体のハードルが下がるというものだ。ライゼの評価もあがるかもしれない。
「おや、一番乗りはレルギアくんですか。いいでしょう。どれどれ……こ、これは……!」
「いや……失敗してしまって……」
だが、教師の反応は意外なものだった。
「こ、これは本当に下級回復ポーションなのですか……!?」
「え…………?」
「明らかに、これは……中級回復ポーションを……いや……上級回復ポーションさえも上回っていますよ……!? ど、どういうことなんでしょう……」
「そうなのか? どういうことと言われても、俺は普通にやってただけなんだがな……。というか、本来ならばこれの倍はいい性能のものを作るつもりだったんだが……」
「ば、倍……!? ますます意味が分からない……」
教師は困惑していた。ていうか、俺のほうも困惑なんだけどな……。
下級回復ポーションというのがどれほどの性能なのか、俺はよくわかっていなかった。
もちろん使ったことも見たこともないのだから、わかるわけがない。
ただ俺の回復魔法で一番弱い魔法を、下級回復ポーション並みの回復量と仮定して、それに合わせただけだ。
「と、とにかく……試しに性能を確認してみましょう……私の見間違いかもしれません……。というか、そうに決まってます。下級回復ポーションが、上級回復ポーション並みの性能なわけがありません……」
そう言うと、フォンドは試しにポーションを使いだした。
モンスターの肉片に、ポーションを一滴垂らす。
本来ならこれで、モンスターの肉片から少し肉が生えるそうだ。
しかし、俺のポーションは――。
「こ、これは……!?」
――ズズズ。
なんと、モンスターの肉片から、モンスターの肉体がどんどん生えてきた。
まるで蘇生されるかのように、どんどん元の形を取り戻していく。
さすがに命までは戻ってはこなかったようだが、ほぼ全身の死体となってその場に現れた。
「お、恐ろしい……これじゃまるでエリクサーだ……こ、こんなポーション……見たことがない……」
フォンドはそう言って、その場に失神してしまった。あらら……。
これは、ポーション調合の授業も俺は受けなくてよさそうだな。
思ったよりもこの世界のポーションってのは、効果がしょぼいみたいだ。
もっと手加減して作るべきだったな。これでも下級だから、かなり抑えたつもりだったんだが……。
教師が失神してしまったせいで、そのあとの評価はうやむやになった。
授業終了を知らせる鐘が鳴ったので、その場で生徒たちは解散となった。
俺が実習室を出ると、先ほどの亜人の女生徒が、恐る恐る、俺に話しかけてきた。
獣耳がぴょこんと出ていて、本当にかわいらしい女の子だ。
「あ、あの……レルギアくん……その……さっきは、ありがとうございました……」
「ん? ああ、あのバカな男子生徒のことか。気にするな」
「それもですが……ポーションの瓶から守ってくれたこと……」
「女性を守るのは雄として当然のことだ。それも気にするな」
俺はふと疑問に思ったので、きいてみることにした。
「なあ、なぜ言い返さないんだ?」
「え……?」
「あのバカな男に、いくらでも言い返せるだろう?」
「でも……私は亜人だから……」
「だからなんだ? 君はたしかに亜人だ。だが、それがどうしたんだ……? こんなにかわいいんだ。君の言うことをきかない雄はいないと思うが……」
俺は素直にそう言った。そして、彼女の耳を軽く撫でる。
「う……わ、私……可愛いですか……? そんな……お世辞はいいです」
「お世辞じゃないがな……?」
俺がそう言うと、彼女は顔を真っ赤にして照れた。
まるで「かぁっ」という擬音がついているようだ。
ますます可愛い。
獣耳がぴょんと折れ曲がっている。照れるとそうなるのか?
「れ、レルギアくんはすごいです……。なんでも、思ったことを言えて……」
「別にすごくないがな。君も、思ったことを言えばいいだけだ」
そういえば、この子の名前をきいてなかったな。
「君、名前は……?」
「ふぇ、フェリスです……」
「そうか、よろしくなフェリス。またなにか困ったら、俺を頼ってくれ」
「は、はい……! ありがとうございます。レルギアくんっ!」
なんだ、引っ込み思案な子かと思ったが、こんな笑顔ができるんじゃないか。
いつかフェリスもそのうち、俺の女にしたいと思った。
だがその前に、そんな可愛いフェリスをいじめたあの男たちをどうにかしないとな。
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