(三)-3

 しかし、あいつに惚れているクミンにはそれが気にくわないのだ。まあ、そのうちこういう事態にはなるとは予想していたのだが、それが今来たというわけだ。あー、めんどくさー。

「なんだとてめえ」

 そう言うとクミンは私のセーラー服のリボンの胸の結び目を掴んできた。どうやら私の心の声が実際に声帯を震わせて漏れ出ていたらしい。まあ、面倒くさいのには変わりないし、どうでもいいことだが。

「下赤塚フジオに気があるのか、お前」

 私が周囲に聞こえる程度の少し大きめの声でそう言うと、クミンは少し頬を赤らめつつパッと手を離し「そんなことねえよ」と言ってきた。


(続く)

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