演じるエンジェル

【い-14】文学フリマ京都_筑紫榛名

(一)

 今朝はFAXの音で目が覚めた。こんなものを使うなんて、時代遅れも甚だしい。以前に比べれば幾分かましだけど、世間一般の現状からすればもはや十分古典的な連絡手段だ。

 私は掛け布団をどかすと、裸のまま壁際に近づき、カラーボックスの上に置かれたFAX台の用紙ホルダーから滑り落ちたFAXを拾い上げた。

 FAXには「指令書」と書かれていた。宛名は黒塗りにされていた。

「誰宛よ、これ」

 寝ぼけたままそうツッコみ、書かれている文章に目を通した。


 「コードネーム『志木アサカ』は、玉淀コウジのカップルを成立させること。なお、相手は任意とする。天界の神より」


「相手は任意って、相変わらずいい加減ね……。まあ、いいわ。こちらはいつもの規定通りに、本人の希望を最優先する形でやるわ」

 私はそのFAXを折りたたんで鞄に入れた。

 そしてバスルームに入った。


(続く)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る