第55話 ドワーフのおっさんをナンパしてみた

 定時間際、本日最後の一人に決めたドワーフ種族だと思われる髭もじゃの背の低いおっさんを鑑定した。


――――


 グエイグ 年齢45歳 ドワーフ 国籍:エルクラスト(ドワーフ地底王国)


 勇者素質:A


 LV43


 HP:4560


 MP:1248


 攻撃:2456


 防御:3323


 素早さ:1345


 魔力:2112


 魔防:3211


 スキル:防護魔術++ MP増加+ 土属性+ 重装鎧+ 槌術++ 武器製造++ 防具製造++ 高性能武具製造++ 鍛冶士++ 甲冑士++ 

 

――――


 最後に鑑定したドワーフのおっさんが、かなりのレアなスキルを持った御仁であることが判明した。


 思わず、顔がニヤケそうになるが、目の前を過ぎ去ろうとしているおっさんは、どうやらスキルから見ると、武具製作者としてかなりの腕前を持つ人だと思われた。


 武器も会社支給品の剣が結構、切れないんだよな。


 まぁ、オレの腕も無いんだけど、全力で斬ると根元からポキンと折れそうな気もするし。


 このおっさんのスキルをコピーして自作してみようかな。熟練度無いから微妙な物かもしれないけど。


 オレは通り過ぎようとしているおっさんの持つスキルをコピ―して自分の物にするために、声をかけることにした。


「す、すみませんっ! オレ、ここの領主なんですけど、良かったら屋敷で食事でもいかがですか?」


 足早にオレの前を過ぎ去ろうとしていたため、気を引くためにナンパみたいな声の掛け方になったことで、ドワーフのおっさんもオレを見て怪訝そうな顔をする。


「ワシをナンパでもするつもりか? だが、すまんがワシは大事な用事の最中でな。遊んでおる暇はないのだ」


 ドワーフのおっさんは、呼び止められたことを煩わしそうに感じており、直ぐにでも話を打ち切って目的地に向かいたそうにしている。


 何としてもレアな武器製造系スキルが欲しい下心があるため、オレは迷惑そうにしているグレイグを強引に屋敷に誘うことにした。


「お急ぎなのは分かりますが、そろそろ日も暮れますから、門も締まりますし、我が屋敷で一日お泊り下さい」


 グレイグは日の暮れかけている空を見て、ふうぅとため息を吐く。


「仕方ないな。どうやら、ご領主様は黒目黒髪からすると日本人の派遣勇者のようだが、名前を聞かせてはくれぬか? 確かここはブッへバルト子爵領だったと思ったが、いつの間に領主交代しているとは思ってなかったぞ」


 グレイグがオレが領主だと名乗ったのを訝しんでいるようだが、この領地で色々とゴタゴタがあって領主が変わったことを知らないらしい。


 そう言えば、ドワーフ地底王国って隣国だったよな。隣国から流れてきた有能な人材はスカウトするべきだよね。


「ああ、すみません。申し遅れました。(株)総合勇者派遣サービスのチーム『セプテム』主任、柊翔魔です。ゆえあって元ブッへバルト子爵領で現ヒイラギ領の領主を勤めさせてもらってます」


 オレの自己紹介を聞いたグエイグの眉がピクリと動いた。


「ほぅ、その若さで派遣勇者の束ね役をやっておるのか。うすぼんやりとした若造だと思ったが、さすがに日本人の派遣勇者というべきところか。おっと、名乗られて、名乗り返さないのは礼を失するな。ワシはグエイグ。しがない放浪の鍛冶士だ」


 グエイグが握手を求めてきたので、しめたと思い、最高の笑顔を作り握手を交わす。


 ――――


 >武器製造をコピーしますか? Y/N


 >防具製造をコピーしますか? Y/N 


 >高性能武具製造をコピーしますか? Y/N


 >鍛冶士をコピーしますか? Y/N


 >甲冑士をコピーしますか? Y/N


――――


 コピー表示されていったスキルを根こそぎコピーしていく。これで、武具を製造する能力を底上げしてくれるスキルを手に入れることができた。


「何をニマニマとしておるのだ。翔魔殿は、変な趣味でも持っておられるのか? ワシはお断りだからな」


 グエイグは、レアスキルをコピーできてニマニマしていたオレに驚き、手を引っ込めていた。


 オレとしても男の手を握るのは趣味じゃないが、スキルを手に入れたら、バイバイするというのは不誠実なので、約束通りクラウディアの孤児院につれていくことにした。


「オレもそんな趣味はないですよ。さぁ、我が屋敷へどうぞ。少しばかり人が多くて、ガヤガヤしますがきっと慣れますので……」


「ん? 領主の館にはそのようにいっぱいの使用人を雇われているのか?」


 勘違いしているようだが、訂正するのも少し面倒だったので、見てもらえば分かると思い、道案内をするためグレイグと連れ立って孤児院に戻ることした。

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