第21話 色々とありすぎて困る
翌日から会社での新しい役職が付いた。
『(株)総合勇者派遣サービス』派遣勇者七係主任、
派遣勇者七係、通称『チームセプテム』が俺の指揮することとなった部署だ。
副主任としてエスカイア・クロツウェル、そして見習い社員の青梅涼香がチームメンバーとして所属している。
我が七係の主な業務はエルクラスト害獣駆除機構から委託される高難易度依頼の処理であるのだ。
つまり、仕事は稀にしかないはずなのだ。定時まで暇なのである。そう、暇なのであったのだ。
「柊君、とりあえずここが私の生まれ故郷の聖エルフ共和国連邦の首都アニシザムよ。建材や家具などが特産品ね。あと、森でとれるキノコとか木の実も意外と隠れた名産なの」
とりあえず今、オレ達はエスカイアの故郷である樹齢数万年と言われる幹の周囲が三〇〇〇メートル、高さ一〇〇〇メートルほどもある巨大な聖樹の上に築かれた都市に来ていた。
普通の日本では考えられない木の上という位置に都市が存在している。
都市の規模とはしてはさして大きくないが、建っている位置が位置なので、景色はすこぶるよろしかった。
「さ、さすが異世界ね。私もこんな場所に都市を作った種族がいるだなんて信じたくないわ……」
涼香さんも眼下に拡がる景色を見ながら異世界観光を堪能していた。
ちなみにまだ防具が仕上がっていない涼香さんは黒いストッキングにミニプリーツスカート、白いブラウス、そして社名の入ったジャケットを羽織っていた。
どうみても女子高生……コスプレ……。というと、涼香さんの鉄拳がとんできそうだが、元が綺麗な顔立ちなので、意外と何を着ても似合ってしまっていた。
「柊君? どこ見てますか? わたくしの説明を聞いてますか? 涼香さんのパンツ見えねえかなとか思ってませんか?」
隣に顔を寄せてきたエスカイアさんが、ジト目でオレを睨んでくる。
実は昨日の夜も社員寮で一悶着があったのだが、諸事情を鑑み詳しいことを省かせてもらう。
そこで、生まれて初めて女性と同じ部屋で寝るという突発イベントとともに、肉食系なおねいさん二人によって大人への階段を昇ってしまったことで、体力と精神力を大いに消耗した。
どうも二人ともが競い合うことで、より過激化している気がするが、被害を被るオレとしても避けたい事態である。
終始二人のペースに引っ張られてしまったなぁ……。
まぁ、それはそれで色々な経験ができたのだが……。
心なしか、昨日よりも二人のオレに対する距離感が近づいている気がする。
だが、これは二人とも好きだと口にすると、一瞬で死亡するフラグが立つやつだと思われる。
クロード社長からはこっちに移住すれば、一夫多妻だから大丈夫とか意味の分からないお誘いがあったけど、今のところは丁重にお断りしておいた。
「そ、そんなこと言ってませんよ。違った。考えてませんよ」
「何? 私のパンツみたいの? 柊君って意外とムッツリだよね。まぁ、実は知ってたけど。飲みに行く度に胸チラとパンチラとかで誘ってたけど目で追うだけで手を出さなかったもんね。偉い、偉い」
涼香さんに頭を撫でられているのだが、これは上司として怒っていい事例なのか。パンツが見たいかと聞かれても『見たい』と答えればセクハラになるし、『見せるな』と言えばパワハラとなりかねないデリケートな問題である。
プライベートなら是非見せて欲しいと答えるべきだろうが……業務中だし、クロード社長も派遣勇者としての心構えを持てと言ってたしね。
「涼香さん。その件につきましては、業務外にて対応します。今は業務中なので口を慎むように、エスカイアさん案内を頼むよ」
「ちぇー。見せてもいいのを穿いてきたのにな。残念」
涼香さん、あんた痴女か。確かに飲んでるとき、いやにボディタッチが多かったけどさ。
細マッチョの筋肉が好きとか言ってたし、オレも気にせずに触らせてたけど。そういった気持ちがあったなら、早く言って欲しかった。
というか、昨日の夜は欲張り過ぎです。
「柊君。涼香さんとだけ、イチャついたらダメって昨日の夜に言いましたよね?」
エスカイアさんがオレの腕にしがみついてくる。彼女もまた薄幸可憐なエルフの容姿を被った肉食女子だった。
負けじと涼香さんも反対側にしがみついてくる。かくて、オレの両腕は使用不能になっていた。
「はぁ、仕方ないけどこれで行くか……エスカイアさん目的地に案内してね。挨拶に遅れたら相手に失礼になりますから」
「ああぁ、その点は大丈夫ですよ。今から会うのはわたくしの父ですから。エルフ五大氏族クロツウェル氏族の族長で聖エルフ共和国連邦の主席ムライ・クロツウェル。あれ? 言ってませんでしたっけ?」
はい、全く聞いておりませんが……というか、エスカイアさんのお父さんに会いに行くのに、他の女連れってどうなのよ。
待って、その前にそもそもエスカイアさんって国家主席の娘ってことは、かなりなお嬢様ってことなのか。
俺は不安を感じながらもエスカイアさんに案内をしてもらい、両手に女性を侍らせて、目的の場所へと向かっていった。
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