陰陽師は踊る

こぼねサワー

第1話

一瞬のマタタキの合間に、ふっと軽いメマイを覚える。

カラダが宙に浮かぶような、それとも地面に沈みこんでいくような……

フワフワしておぼつかない、いつもの感覚。


直後に周囲を見わたせば、そこはもう"誰か"の夢の世界。


「って……オレ、誰の夢と"同期"してんだっけ?」

モコモコしたお気に入りのパジャマを着た千影ちかげは、乳白色のなめらかな美貌をキョトンとさせた。


そこは、だだっ広い吹き抜けの大広間の一隅いちぐう

中世の西欧風の壮麗な舞踏ホール。


窓の外は、ペールブルーの爽やかな空に鮮烈な緑の木々。

木もれ日が、柔らかく明るい光を窓ガラスからふりそそぐ。


ザワザワとした人いきれに誘われて見わたせば、見目うるわしい装いの少年たちが大勢、おもいおもいの場所に立って、舞踏のパートナーと談笑している。


黒い蝶タイにダークカラーの燕尾服えんびふくを身につけ、ウサギの耳を模した飾りつきの漆黒しっこくのビロードの仮面で目元を覆って。

燕尾えんびのお尻の中心には、フサフサとしたまん丸い白いシッポが可愛らしく揺れている。


この光景には、見覚えがあった。

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