箱入り皇女は至高の恋をお望みです!~理想の殿方を探す旅に出ます。ただし、美しい者以外認めません!?~
じゅん麗香/ビーズログ文庫
プロローグ
(なんと、美しい!)
五歳のシャルロット・ド・ヴァローズ皇女は、くりっとした大きな
大陸一の
皇宮礼拝堂専属の
新郎は
ウエストをギュッと細く
頭部ではネックレスと同じデザインのティアラが
(姉さまがキラキラしてるわ。キレイ。キレイすぎる!)
末っ子のシャルロットを
礼拝堂の高いドーム型の
すべてが、まるで異空間に
あまりに感動したシャルロットは、
「姉さま!」
フラワーシャワーを浴びて頭部に花びらをつけている姉を、シャルロットは
「姉さまは、どうしてそんなにキレイなの?」
「まあ、ありがとう」
新婦は長いトレーンを持ち運んでいる
「好きな人と
姉の言葉に、シャルロットはコテリと小首をかしげた。
「だけど姉さまは、セイリャク結婚なのでしょう?」
五歳のシャルロットでも、自分たちは帝国の利益になるように、適切な相手と
「いいえ、
シャルロットは「ええっ」と声をあげて、目を丸くした。
「私は心から愛し合える人ができたの。だからお父さまとお母さまにお許しをいただいて、大好きな人と結婚したのよ。この日が待ち遠しかったわ」
姉はそう言って幸せそうにはにかんだ。
その白い
「わたしも恋愛結婚をして、キレイになりたい!」
シャルロットの意気込みに、姉はクスリと笑う。
「ならば、愛されるような女性にならないとね。人として美しくある努力を
「美しくある努力! なるほど!」
シャルロットは勢いよくうなずいた。
「愛し、愛されると、女性は世界一
「恋愛をすると、世界一キレイに。……みんな幸せになる」
シャルロットは、その言葉に
宝石がちりばめられたドレスの胸元に、
思えば婚礼の儀では身内の王侯貴族だけではなく、
シャルロットは決意した。
「わたしも恋愛結婚をして、美しくなって、みんなを幸せにする。姉さまありがとう!」
姉はにっこりと
――ここでシャルロットは、大きな
(
シャルロットの中で、「恋=美=幸せ」という方程式ができあがった。
その日を境に、シャルロットは「美」について研究をし始めた。
自分
皇女らしく「たくさんの人を幸せにしたい」と願う努力のベクトルが、おかしな方向に曲がっていた。
数年のうちにシャルロットは、「変わり者の
そして十一年後。
十六歳になったシャルロットは、
「――そうして真実の愛を知った二人は、永遠の口づけを交わした……」
支柱に
シャルロットはワンピース状のシルクの
「ねえ、アンヌ」
「いかがなさいましたか、シャルロット様」
侍女のアンヌは恋愛小説に落としていた視線を上げた。
こちらもシャルロットに負けず
「わたしはいつになったら、その小説のような恋愛ができるのかしら?」
シャルロットの大きな瞳には、ワクワクとした期待が
「シャルロット様は皇后陛下がお持ちになる
「だって、どのかたもわたしにふさわしくないのだもの」
シャルロットの信条の一つに、「容姿は心の鏡」がある。
心が美しければ、当然、見た目に表れると考えている。「人として美しくある努力を怠ってはならない」と姉に言われた
だからシャルロットは外見で判断して、縁談を断っていた。しかも、その理由をはっきりと口にした。
あまりに相手に失礼で、いつしか母親は
シャルロットは第九子、四女で末っ子だ。兄姉たちは政治的な結婚が多く、そのおかげで重要な国や組織との関係は強固になっている。どうしてもつながりたい勢力もないことから、両親はシャルロットを好きにさせることに決めたようだ。
「お相手がいなければ、恋が始まりようもありません」
「だから、そういうものは、ふさわしい相手とともに自然に……」
「理想の
シャルロットはアンヌの言葉が脳に
「このままでは、恋ができないということ?」
「そうなります」
「そんな! わたしはどうすればいいの?」
シャルロットはショックを受け、細い
(小説のヒロインたちは誰だって、自然に恋に落ちているのに!)
心身ともに磨いて美しくいれば、恋愛小説のような恋をしたうえで結婚できるものだと信じて、シャルロットは楽しみに待っていた。
「ならばシャルロット様、お相手を探さなければいけませんわね」
「恋人探しね。……うん、する。しなければならないわ!」
シャルロットは力強く
――こうして、シャルロットの恋人探しが始まった。
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