破局予定の悪女のはずが、冷徹公爵様が別れてくれません!
琴子/ビーズログ文庫
プロローグ
適当な馬車に飛び乗り、
窓の外のオレンジ色に染まる街並みは初めて見るもので、
私ですらどこか分からないのだから、
「すみません、ここで降ります!」
窓から顔を出し
半日もひたすら馬車に
白を基調にしたお
「えっ……紅茶一
そしてメニューを見た私の口からは、
仕方なく
「ここ、いいかな?」
「あっ、はい! どう、ぞ……?」
「ありがとう」
不意に声を
――この低くて甘い声を、聞き間違えるはずなんてない。
それでも何かの間違いであってほしいと願いながら、
そして向かいに腰を下ろした人物の顔を見た
「ゼ、ゼイン様……どうしてここに」
そう、私が
「グレース、今回の
「ええと……それは……」
「俺から逃げるなんて不可能なのに、君も
あの
彼はメニューへと視線を向け、コーヒーを一杯と、
「この値段ならグレースは飲み物以外、頼んでいないんだろう? いくらでも食べるといい、俺が
「わ、私だってお金は、持っています……」
持っているけれど
私の行動パターンを読み、私の好物を当たり前のように頼んだゼイン様は、窓の外へ視線を向ける。
「今夜は近くにとってあるホテルで休んで、明日は観光をして帰ろうか。俺もこの街へ来るのは初めてなんだ」
「……えっ?」
「この辺りは、君の好きな海産物が
あまりにも準備の良すぎるゼイン様に完全敗北した気持ちになりながら、私は内心頭を
このままでは本当にまずい。そう思った私はきつく両手を
「ゼイン様、私達、もう別れ――」
「グレース」
「俺の気持ちは一生変わらないんだ。君が逃げたとしても地の果てまで追いかけるから、
「……っ」
いつだって
それでも私はゼイン様をこっぴどく振って別れ、ヒロインと
――それがこの世界で暮らす人々の、そして彼にとっての、一番のハッピーエンドなのだから。
そのために
「絶対に別れてなんかあげないよ」
そして
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