麻莉亜とアザミ

 麻莉亜はお嬢様だ。白くて上品な顔立ち、お淑やかな所作、美しい言葉遣い。どこをとっても完璧な上流階級。なのに私みたいなのにも話しかけてくれる。

「アザミさん、今日も可愛らしいですわ」

 あまつさえ抱きついて頬ずりをしてくる。

「うぃててて……麻莉亜、恥ずかしいよ」

「アザミさんへの愛をどう表現していいか分からないのですわ〜!」

「分かったから、普通にして」

「これが私の通常運転ですのに……くすん」

 麻莉亜はしぶしぶといった体で手を下に降ろす。

「今日のアザミさん、なんだか桃の花の香りがするようですわ」

「ピンポン、当たり! 桃の花の香水つけてるの。麻莉亜、鼻いいねぇ」

「えっへんなのですわ! 桃の花の香り、アザミさんによく似合いますわ。……私も今日、香水つけてるんですの。お分かりになって?」

「薔薇でしょ」

「当たりですわ〜! さすがアザミさん、抜かりないですわ」

「麻莉亜には薔薇が似合うよ」

「前そう言ってくださったから、今日もつけてきたんですわ……アザミさん、結婚してくださる?」

「な、なにいきなり。まだそんな歳じゃないもん。成人してたらまだしも……女性同士はまだ無理だけど」

「愛の力で可能にしたいですわ」

「ふふっ、麻莉亜ならできそう」

「任せてくださいまし!」

「でも麻莉亜、大人になったらめちゃめちゃモテそう。私のことなんて忘れちゃうかも」

「そんな薄情者に見えます? アザミさんへの愛は本物ですわ」

「嬉しいよ、麻莉亜」

 いつか二人で暮らす日々を想像してみる。思ったより楽しそうで、そういう未来もそんなに悪くないな、と思うのだった。

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