決闘!動如雷霆!
店の前に見物人が集まり始める。
観客たちから賭けを集めるのにタンユがビショップに話しかける。
「オッサン。さすがに
ビショップは少し腕組みをして考えているようだ。街の保安官としては、そもそも決闘やましてや賭けなど止める立場なはずだが、ちょっとしたお祭の余興的な感覚なのかノリノリである。
しばらく考えた末、自分の腰の警棒に手を取った。
「おっと、落としてしまった」
そう言って、リカルドの方へ転がす。タンユがさすがだぜっといった風に、ビショップの肩を叩く。困惑するリカルドに「拾え、拾え」とタンユはジェスチャーした。
「えーーー……マジっすか……」
警棒を手に取り、リカルドはどうしたものかと悩んでいた。タンユから聞いた話では、ミゲルもタンユ同様に体術に長けているそうだ。リカルドは喧嘩が苦手だったし、真面目にやろうが不真面目にやろうがどうせ勝てないので、適当に殴られて終わればフランも納得すると思っていたのだ。
警棒を振ると長さが六十センチほどになった。しなりを確認し、石畳の道にコツコツと当てた。次に石畳の道をゴリゴリと警棒でなぞっている。リカルドの謎の行動に、タンユやビショップ達は首をひねった。
「あいつ、何してんだ?」
「彼が一番得意なのは剣術なのだろう? だいぶ有利になったはずだが」
実のところ、タンユは剣術トリプルSの実力を見たかったのだが、リカルドが真面目に戦う気がなさそうで、少し落胆していた。
リカルドは一連の謎の確認が済むと、こちらに近づいてきて、なぜかミゲルの利き腕がどちらか聞いてきた。
「右利きだ」
ビショップから回答を聞くと、「わかりました」と言ってまた元の位置に戻った。
賭けを集めて回るタンユは、背中をトントンと叩かれた。振り返るとよく知った爺さんの三人組がいた。『デストロイ・オブ・ゴブリン』というギルドで、名前の通りゴブリンの駆除を専門でしているギルドの爺さん達である。
「あれ、リカルドか?」
ミゲルの挑戦者を確認される。女性ならいざ知らず、リカルドのことを爺さん達が知っているのは意外だった。タンユが肯定すると、三人とも難しい顔して、こう続けた。
「警棒は取り上げた方がいい。あの子に武器を持たせちゃイカン」
続きを聞こうとしたが、ビショップから早く戻ってこい、と手招きされてしまった。
「あとで詳しく聞かせください。申し訳ないです」
老人たちはタンユを引き留めようとしたが、そのままビショップの元へ向かった。
ミゲルが指の開いた格闘訓練用のグローブをはめて準備運動をしている。念のため、リカルドにマウスピースするか確認すると、首を横に振った。タンユは、リカルドが殴り殺されないか少し心配になってきていた。爺さん達の言っていたことが気になる。もしかしたら何かの理由で、武器もまともに使用できないのかもしれない。
「二人とも位置について」
ビショップがミゲルとリカルドの間に割って入るように手を入れる。
「ファイッ!」
決闘の火ぶたが切って落とされた。
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