大いなるオカルト研究部
本居鶺鴒
プロローグ
第1話 合宿へ
高校生が部活の合宿に行くというのはありがちな話ではある。
「とはいえなぁ」
「? どうかしたのかい?」
先輩になんでもないと答える。
現在は僕の入っている部活”大いなるオカルト研究部”の合宿活動中。
合宿とは言ったが、合宿申請を学校に提出していないので、実際は合宿だと言い張っているだけの旅行だ。
大いなるオカルト研究部もまた同じように、先輩が、いったいどんな方法を使ったのか空き教室の使用を学校に黙認させているだけで、正式な部活ではない。当然顧問もいないので、この合宿の参加者は部員のみ。
そして大いなるオカルト研究部の部員は、僕と先輩の二人だけなのだ。
「いえ……」
考えなおして、僕は答えることにした。
「合宿って、確かに学生らしい気もしますけれど、男女二人きりでの合宿というのはちょっと変わっているなって」
「そうかなぁ…………いや、そうなのかも。まあ、さすがに部屋は別だしいいんじゃない?」
「部屋と言えば、いったいどこに泊まるんですか?」
僕と先輩は現在、高所から村を見渡す位置にいる。高所とは言っても、駅のある高台。駅から降りて、坂を下ればすぐに村という位置関係なので、大して見渡せるわけではない。
「田舎」とだけ言われてすぐに頭に思い浮かぶような、特徴のない田舎の村。
黒ずんだ木造の平屋が何軒か見える位置に建っていて、隣家と呼ぶには離れすぎているその間隔にあるのは当然のように田んぼ。ゴールデンウイークの今は、水がすでに入っている田んぼと、まだ雑草の生えたままにしている田んぼとが斑であった。
「すぐに案内するよ」
言いながら先輩は坂を降り始めた。
さすがは日本というべきか、どれだけの田舎であっても道はコンクリートで舗装されていて、側溝の割れ目から背の低いタンポポが咲いていた。街中でも見かけるはずだが、田舎に来たからかやけに気になった。
一昨日――ゴールデンウイークの直前の出来事だった。
「合宿に行ってみたくないか」と突然先輩に言われて、反射的に「いいですね」と答えた。
昨日の昼前に、教室にやって来た先輩は「合宿先が決まったから、準備しておいて。明日の朝には出るよ」と。
スピード展開にもほどがあるが、よくある事だ。
大いなるオカルト研究部部長、
すでにアメリカの、確かミスカトニック大学とかいう大学を卒業しているのに、僕の通う赤夢高校に入学した天才にして変人。高校三年生。得意科目は全部で、好きな食べ物はサーターアンダギー。
僕は去年、高校に入学してすぐに大いなるオカルト研究部に入り、もうすでに一年以上も先輩と関わってきたけれど、今だに謎が多い。
「あっ、ちなみに泊まる場所、私の実家だから」
「…………は?」
和風の、邸と言ってもいいほど大きな家。
「ここが私の実家」
「いやいや、本当にここに? というか、これって先輩の里帰りなら、僕は邪魔なんじゃ?」
「里帰りではないよ。部活動の合宿。まあ、今に分かるよ」
先輩は、どこか妖しい顔で笑った。経験上、こういう時は僕が思った以上の厄介ごとに巻き込まれる。
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