第20話 思心。I think of you.〜あなたを想う〜1つの恋心〜one love〜
「ねえ、瀏司。麻伊紫さん静かなんだけど…どういう事?何かあった?実は二人付き合ってるとか?」
「は?ねーし!告られて断ってから何もねーよ!」
「そうか…」
「そっちは、どうなの?上手くいってるんだよな?」
「うん、大丈夫だよ」
「それなら良かった」
「…でも…」
「でも?何?」
「…時々…不安になる」
「えっ?」
「…時々、不安になるの…信じてるけど…でも…元カノが現れて以来…私…」
「…朋花…」
「こんな事…言えないよ…拓海は…何でも言ってって言ってくれるけど…私…瀏司がいるから、ここまで来れてるって言うか…」
グイッと私を抱きしめる瀏司。
ドキッ
「大丈夫!先輩を信じて!」
「…瀏司…うん…」
抱きしめた体を離すと瀏司は去った。
抱きしめられた体が
何処か優しくて
温かく感じた……
―――― そして ――――
二人の想いが
二人の心(ハート)が
縮まり始めていく―――――
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
ありきたりな毎日
ありきたりな生活
この生活が当たり前になっていた
―――――そして
1つの恋心が芽生えていた
「瀏司、聞いて、聞いて」
「何?」
「今日、拓海とデートしてた時、凄いカップルいたんだよーー」
「へえー、どんな?」
「あのね……」
話を続ける彼女
気付いたら俺は
彼女に想いを寄せていた
明るくて
時々 ムカつくとか思うけど
知らず 知らず
夢中で彼女を目で追っていた
「ねえ、聞いてる?」
「ああ、聞いてるよ」
「本当?」
「ああ、本当」
「じゃあ話してみて」
「えっ?あー…えっと…」
「…聞いてなかったんだ」
「いや…ちょ、ちょっと考え事…してて…悪い」
「もうっ!」
彼女は再び話をしてくれた。
それから数日後のバイト帰り、ある人物が私の前に現れた。
「朋花さん」
声のする方に目を向けると
「…あの…」
「ごめんなさい。ちょっと近く迄来て、あなたの事、拓海に聞いていたから」
拓海の元カノだ。
「少し時間いいかな?」
「えっ?あ、はい……」
私は彼女に連れられ近くの喫茶店に移動した。
「ごめんね。バイトで疲れてるのに連れ出したりして」
「い、いいえ」
「私、拓海の元カノの相沢あい。あなたは今カノの菊馬朋花さんよね?」
「…はい…あの…どうして。私に…?拓海に直接…」
「あなたに用事があるから」
「えっ?」
「単刀直入に言わせて貰うけど…拓海と別れて!」
ズキン
「…えっ…?」
「…私…拓海の事が好きなの…別れて気付いたの…私の中で拓海は、とても大切で大事な存在なんだって…だから…お願い…朋花さん…」
彼女は目を潤わせ言う。
「………………」
「無理も承知の上で…お願いします…」
彼女は頭を下げ顔を上げた次の瞬間、彼女の目から涙がこぼれ落ちた。
「や…やだ…ごめんなさい…感情が入って…気にしないで!見なかった事にして。そ、それじゃ…私はこれで。ここは出しておくから」
そう言うと彼女は喫茶店を後に帰って行った。
その日の夜―――――
「…拓海と……別れて…下さい…か…」
「えっ?何が?」
ビクッ
背後からの突然の声に驚か体が強張る。
「きゃああっ!」
「どうしたの?朋花ちゃーーん、深刻な顔して」
「ちょ、ちょっと!いきなり…驚くでしょ!?」
「いや…驚かすつもりは一切なかったんだけど…で?どうした?」
「別に大丈夫だよ」
ツンとオデコを突かれた。
ドキッ
「…お前の大丈夫は、顔と合ってねーから」
「は?何!?それ!どういう意味っ!?」
「いやいや、変に誤解すんな!お前が大丈夫って時、悩んでんの分かるって事だよ!同居して一年にもなれば見えてくるもんだぜ。相手の良い所とか悪い所」
「…瀏司は…私の事…何でも、お見通しだね…」
「何でもじゃねーけど」
「じゃあ半分くらい?」
「…そうかもな…半分よりも上かもな。あーコイツ、今、何か悩んでんなーとか、あー、コイツ今日は機嫌良いじゃん!とか…本当、色々見れて人間って面白いなーって思う瞬間が多々ある。で?どうしたんだ?言ってみろよ」
「…うん…」
私は話す事にした。
「は?別れてだ?勿論、別れないって、キッパリと言ったんだろ?」
「…言う前に帰ったよ」
「…別れる気ねーんだろ?」
「当たり前だよ!……そんなの……」
「後半…自信なさそうに言うなよ」
「…嬉しい反面…不安だったり…拓海が見せる顔の裏腹の中に別れようって…今日言われるんじゃないかって…」
グイッ
抱き寄せる瀏司。
ドキッ
「…瀏…」
「…先輩を信じろ…!…そう言いたいけど……俺には…もう……言えねーよ…」
ズキン…
「…えっ…?…瀏…」
「…心から言える自信ねーし…言う権利…ない…」
ズキン… スッ
抱き寄せた体を離す。
「…瀏……司……?どうし…」
ドキン
私の唇が瀏司に塞がれる一瞬の出来事だった。
「…お前が…好きだから…」
ドキン…
「…えっ…?」
「…お前が…先輩の事で悩むくらいなら…俺の事、考えて欲しい。もう、悩む姿なんて見たくねーんだよ…!」
「…瀏司…」
「…悪い…」
そう言うと私の前から去った。
『お前が好きだから』
その言葉が 私の頭の中でこだまし
耳に残っていた
次の日の朝、目を覚ます。
【悪い、急遽バイト。朝ごはんは、きちんと食べろよ!】
そういうメモ紙がテーブルの上に置いてあった。
その日バイトから帰宅する私。
普段なら部屋の明かりがついてるも、今日は真っ暗だ。
「寝てんのかな…?もしくは、バイト長引いて…もしかして…告って意識して、顔合わせ辛いのかな?それとも…拓海の所かな?いや…流石に一緒は…」
私は瀏司の部屋を訪れる。
「瀏司ーー、入るよーー」
ガチャ
ドアを開けると、瀏司の姿はなく抜け殻の状態で、蛻(もぬけ)の殻の様に跡形もなく部屋から荷物などがなくなってしまっていた。
「…えっ…!?……瀏……司……?…嘘……でしょう…?どうし……て……?」
突然の目の前の出来事に驚きを隠せないでいた。
瀏司は私に内緒で部屋を後に出て行っていたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます