第43話

数分後、出入り口で合流した夜斗と霊斗は服飾店に向かっていた

要するに霊斗は雪菜の、夜斗は弥生のものを買いに来たのだが



(うわぁ…見事にカップルしかいねぇ…入りづれえ…)


「じゃあ夜斗、30分後にここな」


「え?分散すんの?」


「そらそうだろ。下手に一緒に回ってみろ、俺かお前に女装趣味があるとか思われるぞ」


「一人でいたら余計に思われるわ」


「お前は大丈夫だろ、こういうところにお前に合うサイズとかないし」


「まぁそうか。じゃあ…30分な」



夜斗はスマホのタイマーを設定して霊斗と分かれた

そしてゆっくり見ているうちに、人の気配を感じて離れる…なんてことを繰り返していた



(店員こないでくれ、精神的に困る)



感覚を研ぎ澄ませて近づく人を警戒しながら店内を見て回る

弥生が持っている服はほとんど記憶しているため、雰囲気が被らないようにするのは容易い

しかし



(弥生結構いろんなの持ってんだよな。持ってないのはメイド服とかそういうコスプレ系とゴスロリくらいじゃね?)



そんなことを考えつつも歩いていると、聞き慣れた女性の声が聞こえた



「夜斗じゃん。女装するの?」


「…みお…なんでここに…」


「いやここ私の店だからね?怪しげに店員を避けてたから声かけただけで」


「…あ」


「気づいてなかったの!?」



夜斗に声をかけてきたのは夜暮の友人の婚約者である澪という同い年の女だ

いくつかの店を経営しており、この服屋もその1つ



「いつ結婚すんのお前ら」


「婚姻届自体は来週かな。式は1月の10日」


「呼ばれたら行くわ」


「じゃあ来てね。で、なんでここにいるの?しかも一人で」


「いや霊斗ときたんだが、なんか置いてかれた」


「どっちかに女装趣味があるの?」


「そう思われるから分かれて見て回ってんだわ」


「違うの!?」


「なんで意外そうなんだよ…。簡単に言うと、嫁へのクリスマスプレゼントを買いに来たんだ。で、あいつ免許ないから俺が運転してきた」


「車ないよね?」


「あいつがレンタカー予約してたんだよ。軽バンだけどな」


「夜斗車買えば?」


「維持めんどい。今でさえ月に2日はバイクのメンテしてんのに」


「自分でやるんだね。じゃなかった、何買うの?」


「弥生が持ってなくて似合う服。この場合弥生は最上位の女性であるため無条件に服が似合うとする」


「うわ理系メンドクサ。結局持ってない服を買いにきたのね。どんなの?」



夜斗はいくつか弥生が持っている服を列挙した

写真はほとんど撮っていないため、口頭での伝達だ



「んー…ゴスロリかユメカワじゃない?」


「なんだユメカワって」


「夢かわいいの略。例えば…あの女の子がきてるのがユメカワ系」



澪が指さしたところにいたのは、マッシュルームヘアの男とピンクを貴重としてところどころ黒い服をきた女だ

靴はヒール…ではなく底上げブーツで、髪はツインテールにしており、背負っているカバンはどこかで見たキャラクターの顔を模したものだった



「…弥生のイメージにねぇな」


「まぁあそこまでごってごてにする必要はないけど、あんなのがユメカワってやつだね。ゴスロリは向こうの女の子」



今度澪が示したのは近くの高校の制服を着た男子と黒いドレスのようなものを着た女だ

身長体格は女子中学生程度に見えるのだがナゼだろう。どこか大人っぽさを感じる

なんてことを考えていると、男子高校生が女に黒い扇子で叩かれていた。曰く「教師をちゃん付けで呼ぶな」と



(教師なのかあのロリっ子!?)


「何となく考えてることわかるけど教師だよあの人。免許証持ってたけどあれは日本のじゃないね。国家公務員?とか書いてあった」


「へぇ…。教師免許ってそんな感じなんだな今」


「で、あんなのはどう?」


「冬なのに暑そう」


「夜斗の趣味に合わせるならこれだけど」



夜斗のボケをガンスルーして澪が手に取ったのは、夜斗の真横にあった服だ

よくあるヘソ出しTシャツとかいうものである



「弥生の肌はあまり人に見せたくない」


「もうめんどくさいなぁ…。ダイビングスーツにでもすれば?」


「体のラインが見えるだろ」


「…ほんっっとうに愛妻家で何よりだよ!」



手刀が夜斗の鳩尾に叩き込まれる

膝から崩れ落ちた夜斗が復帰するのにそう時間はかからなかったが



(客…だよな?俺…)

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