第21話
自宅に戻ると弥生はソファーの上で横になり寝ていた
時刻は20時過ぎ。いい感じに弥生の活動限界だ
(というかこの時間に活動限界なら子どもとかそれどころじゃねぇよな)
そんなことを考えながら再度シャワーをかけ流して着替える
外に出たら風呂、というのは夜斗と弥生共通の癖だ
(…ここで寝させて風邪引かれても困るし運ぶかー)
弥生の首下に腕を入れ、膝の下にも腕を入れて踏ん張る
ちょっと力をかけすぎたのか後ろに持っていかれかけて慌ててバランスを取った
(想像以上に軽いな。飯食ってるのは確認してるが…まぁ、少食だけど)
夜斗の半分すら食べることができないため、食事は基本的に弥生が早く食べ終わり、まだ食べ続ける夜斗を見ているということが多い
実に幸せそうな目をしているため、見るなとは言えない夜斗だった
(俺人の1.5倍くらい食うけど…それにしたってすくねぇな。食費は一般的な家庭の二人分ではあるけど)
「ん…」
(起こしたか…?)
弥生が目を開けるのとほぼ同じタイミングで布団に下ろす
自分も隣に横になり、掛布団をかけた
「夜斗…?」
「ただいま」
「おかえり…。寝てた?」
「おう、かなりしっかり。お前にしちゃ仮眠くらいか」
弥生は寝ると起きないため、それに比べたらまだ寝ていないと言える
が、夜斗からすれば横になった時点で実質寝てるようなものだ
「…寝てる間に、胸揉まないの?」
「なんでその発想になるんだ。揉まんわ」
「…私比較的胸あるのに?」
「ああそうだな、雪菜にわけてやれ」
「喧嘩の原因は?」
「霊斗が紳士本を持ってて、それが巨乳ばっかだったかららしい」
「…前も似たようなことなかった?」
「前はゲームだったな。紳士向けゲーム」
「ムッツリというか、変態」
「やめてやれ」
とは言いつつ夜斗もそう思う
夜斗自身ほとんどそういった本は持っていない
というより、かつて持ってはいたのだが気づけばなくなっていたし、そもそも寝る場所は弥生と同じで自室はほとんどパソコンやらゲーム機などの機材に埋め尽くされている
そのため、一人でするにも場所がないのだ
「夜斗は健全。というより、私が処分した」
「やっぱお前か…」
「あんなのなくても、私がいるから」
「今はな。当時は「あれ?ねぇな。まぁいいや」という感じだったんだぞ」
「…別にいらなかったの?」
「まぁなくても困らない」
夜斗があれを持っていたのも、健全な男子は持ってるものだという煉河と霊斗の意見を参考に購入しただけで読んだのは購入直後のみ
そして霊斗と煉河の趣味が混じってるため、相当マニアックなものだ
作者はもうそういった本を描いていないため、今売れば相当マニアに売れたことだろう
「まぁ、弥生がいるしな」
「…したいと思う?」
「思わない…こともないが、子どもは早いと思ってるな。子どもを作る覚悟がないならやらない方がいいとは思ってる」
「…そっか」
少し悲しげな雰囲気を醸し出す弥生
本人は意図していないことだろう。しかし夜斗には付き合いの長さから手に取るようにわかる
「お前はしたいと思うのか?」
「……うん。夫婦になれたなら、って。ずっと夜斗のこと好きだったから」
「俺も弥生をずっと好きだが、だからこそ傷つけまいとは思っている。というか思っていたな」
「過去形…?」
「ああ。据え膳食わぬは男の恥という言葉がある」
顔を赤くする弥生
言葉の意味は知っているようだ
「けど弥生はもう活動限界だろ。無理したら明日の仕事に支障が出るぞ」
「明日私有休」
「やる気満々だなぁおい…。そんなに色っぽく育てた記憶はないぞ」
「育てられた気もない。これから愛を育むという点では間違ってないけど」
「よく言えるなそんな恥ずかしいこと…思うことは同じだとわかっただけ上々か」
ハッハッハと笑う夜斗
夜斗の活動限界まではまだ1時間ほどあるし、その気になれば4時間はいけるのだが、明日無事出社できるかは話が別だ
「だがしかし用意はなにもないぞ。今からコンビニに行くわけにもいかない」
最寄りのコンビニは徒歩10分。夜斗の職場が入っているオフィスビルの一階にある
中々行こうと思って行ける距離ではないし、行ってアレを買えば店員に顔を覚えられることだろう
「買ってある」
「鋼の意志すぎる…」
用意周到とはまさにこのこと。弥生の手の中には例のアレが収まっていた
なんと10枚セット。さて今夜何枚使われるのかとかそういう話ではない
「よく一人で買ったな」
「天音に相談したら買ってきてくれた」
「あいつ使う相手見つけてから買えよ…。さては金運守りとして財布に入れてやがるな…」
占いの話は古今東西老若男女問わず信じる人は信じている
天音はそういうのをあてにするくらいには乙女だった
「するのはいいが、今夜寝れるかは知らんぞ」
「いいよ。夜斗の欲望のままに、私をめちゃくちゃにして」
(どこで覚えたそんなセリフ)
夜斗の心の声は届かない
いつの間にかはだけていた弥生の服を避けて、上に覆いかぶさる
「後悔すんなよ」
「うん。大丈夫、私の望みだから」
その夜、冬風家には女の高い声が途絶えなかったという…
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