ひとりの「人間」

まがつ

そこにある。

 その箱の中にはあらゆるものが詰め込まれていた。


 チョコレート菓子の空箱。しわのついたスーツ。やたら前向きなタイトルの本。薬の箱。中身の入っている化粧ポーチ。肩紐が伸びてしまっているブラジャー。今流行りの漫画。心理学のテキスト。薬の説明書。絆創膏の剥離紙。畳みもしていないTシャツ数枚。米粒がついたまま丸められたラップ。アルコール飲料の空き缶。ストロー。化粧水のボトル。ゲーム機(据え置きと携帯型どちらも)。ノートパソコン。PTPシート。散乱し絡みあっている電源コードと充電コード。そして、そこから繋がる光る板。そのそばにあるのは、肉でできた人形。


 その部屋には、ひとりの人間の世界が、確かに存在していた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ひとりの「人間」 まがつ @magatsuD

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る