第3話 デュラハンラース ①
ダンッ!
青黒い木の葉と灰色の柱をした木々が立ち並ぶ深い森の中。
「498…….! 499……!ふぅ…」
ダンッ!
漆黒の根元だけがぽつんと残った木々の間にできた空き地で、少年は相次ぐ斧で息を切らしていた。
詠む一連の数字が単なる虚勢ではないことを証明するかのように、彼の右側には到底一人で成し遂げたものと信じられないほど大量の薪が山積みになっている。
「もう最後なのか」
たった今割った一切れを慣れた身振りで薪の山の上に軽く投げ上げた少年は、斧の跡があちこちに生えている巨大な切り株の上に今日最後に残った木片を載せた。
「いやっ!」
気合を入れながら腰に結んだ上着をもう一度ぎゅっと締める少年の姿は、まさに野性という単語を思い出させる。
斧を握る手の甲から腕までぴくぴくとわき上がった筋。
太い首から伸びてきた広い肩はぜい肉のない腰のラインにつながり、一つの巨大な逆三角形を成している。
長年鍛えてきた筋肉の微細な割れが目立つ肉体の中でも鮮明な陰影を帯びる腹筋は最も目立つ。
このように男性の香りを漂わせる少年に、たった一つ不思議で残念な点があるとすれば、そのように素敵な肉体にふさわしい素敵な頭がないという点だろうか。
しかし、それは少年にとって決して問題にはならない。
彼には最初から頭がなかったから。
「ふふっ!」
首のない亡者,
「500!」
ダンッ!
最後であるだけに全力を尽くして打ち下ろした斧は森を爽やかに鳴らし、その軽快な音ほど木の薪はまっすぐな形に割れた。
「終わった!」
空き地の所々に生えた茂みの方にだけ、一日ぎゅっと握っていた斧をむやみに投げ捨て、ラースは立っていた姿勢のまま倒れた。
「あぁ、疲れた」
茂みの上に横たわって空を眺めると、うめき声が自然に流れ出る。
家を出発する前に真っ青だった空は、いつのまにか暮れゆく年に赤く染まっている。
ラースは両手の裏を自分に見せるように持ち上げ,空を満たした赤い画用紙と重ねた。
真っ赤に熱くなった手のひらは、たこと途中途中で剥がれた跡だけを除けば、夕焼けに燃え移る空と比べても違和感がないほど色の差がない。
「やっぱりこの瞬間が最高だ」
たった一瞬の休息もなかった9時間の相次ぐ作業がやっと終わった。
休む間もなく忙しく動いていた両手は、過負荷がかかった機械のように、拍子もなく震えながら熱く盛り上がり、全身は疲れで痛むため、すぐにでも気を失い、頭を悩ませてしまいそうだ。
それにもかかわらず、ラースは自分の一日の中でこの瞬間が一番好きだった。
赤い光で燃える空のように情熱を噴き出している自分の手を見ると、世界中が自分の手にあるようだったから。
だから、肉体の疲れなんて気合いで軽く振り払おう。
心構えを整えながら、ラースは一度深く息を吸い込んだ。
「あああああ!!!!!」
ラースの叫び声に驚いたのか、鳥の群れが高くそびえる木越しに舞い上がった。
「きれいね.... 」
静かにつぶやきながら、ラースは夕日で美しく燃え上がる空に絵を描きながら飛んでいく鳥たちを眺める。 やがて鳥たちが刺繍した一幅の絵が線になり、その線が再び見えなくなった頃、ラースは初めて席を立った。
「もう行ってみようか。」
◆◆◆◆◆
小さなカートを引いて暗くなった坂道を下りてから1時間ほど経ち、ラースはカボチャの形をした提灯があちこちを照らす町の通りに入った。
ハロールズ。
実際に居住する亡者の数は100人前後に過ぎない村だが、多くの都市を通る主要街角に位置しており、数十倍多い他地域の死亡者の往来が多い交易の中心地だ。
それを証明するかのように、ほとんどの都市に押されないほど華やかに飾られた村の街は、夕暮れ時にもかかわらず、人波でいっぱいだ。
「来た!来た! スケルトンもほっペが落ちるほどおいしい目玉キャンディーがたったの5シルバー! プレゼント用はラッピングも承ります!」
「うわっ!こいつ、 グラスでも空けろと言ったのに、胃を空けてはいるね。 吐くならあっちに行ってやれって。 ハハハハハハハ! はぁ…はぁ…. うぅ…うぇっ」
皆が見る前で自分の目玉を抜いて飲み込んでから、タンブリング3回目で目玉を元の位置に戻す妙技を披露し、見物人の口と財布を同時に開けてしまう奇妙な飴売りから酒と歌を踏み台にして、一日の苦難はもちろん胃腸の中まで吹き飛ばした人たちまで。
実に多様な通行人の行列が今日も列に並ぶ。
一日一日姿は違っても、その中に染み込んだ活気は相変わらずの街に平和を感じ、ラースは巨大なカボチャ形の建物がそびえ立っている村の中心街の方に足を運んだ。
中心街に近づくと、ひまわりのような暖かい色味で明るく輝くカボチャの建物に、まるで一つの大きな顔のように荒々しい目つきと大きく開いた口も描かれているのも見える。
おそらくラースと同じ方向に向かって歩いているほとんどの亡者の目的地もまさにここ、交易所だろう。
「今日も私たちの交易所に来られた皆様を心より歓迎いたします。 助けが必要な販売者の方や購入者の方は、当社の従業員であるディーラーを訪問してください。 取引がより迅速かつ正確に進められるよう、誠心誠意お手伝いいたします。 ありがとうございます」
訪問者を歓迎するかのように大きく開いているカボチャの顔の口、出入り口の役割をするその門を通って建物の中に入ると、はっきりとした音声で吐き出す案内文があちこちに設置された魔工拡声器を通じて鳴り響いた。
交易の中心地として発展してきた村の最中心地に位置するだけに、交易所は地下7階から地上3階まで構成された莫大な大きさを誇る。
単純な販売と購買を越えて物々交換、競売まで実にすべての取引を主管するところだと言えるところなので、この村を通る大部分の商品は少なくとも一度はここに足を踏み入れることになると言っても過言ではない。
あれこれ考えているうちに、ラースはついに約束の場所である自由取引第3区域に入った。
第3区域は相対的にかさばる物品が取引される区域らしく、廊下は大きな大型カートでいっぱいだ。
「えーと…… 待ち合わせ場所は正確にどこだっけ?」
コーナー付近に立ち、荒い口調で言い争い始めるエルフ·グールカップルの横を静かに通り過ぎながら、ラースはズボンのポケットをあさった。
「おい、そこお前! 早くどけ!」
「ああ!すみません!」
荒い叫び声に自分が貨物専用経路に足を踏み入れていたことに気づいたラースは、素早くつま先を廊下の脇に引っ張った。
直後、大柄なスケルトンが8人もくっついて押していた巨大な山車がラースをかすめるように通り過ぎた。
「ふぅ、危なかった」
わずか数秒前まで自分の足が置かれていた床のタイルに残された太い車輪の跡に身震いし、ラースは肩をすくめ、再びポケットをかき回して、ねじれた羊皮紙を取り出した。
「見てみよう、今回の取引場所は72番なんだ。 買い手はフラット…… ドミトリーさん」
ラースが声を出して読んでいる羊皮紙の彫刻は交易書の証書だ。
交易所のディーラーたちによって発給されたこの証書は取引約束場所に指定された区域はもちろん、代金と取引物品をはじめとする色々な重要情報が書かれている。
左下の端に取引内容を保証するという交易所の赤い印章が押された部分まで几帳面に確認したラースは、廊下の天井にぶら下がっている表示板の数字を読みながら、指定された場所にまっすぐ向かった。
「ここが68番だから、69、70、71…。… あっ」
ためらうことなく進んでいたラースの足取りが、突然好ましくない人物の存在を発見し、ガタガタと止まった。
約束の場所には黄金色に染めたタキシード姿のゴブリン·ゾンビが短い脚を絶えずカチカチしながら立っていた。
(どうしてシャイロックがここに…)
シャイロックという名前のこのゴブリン·ゾンビは実際に取引をしてみた間柄ではないが、いくつかの村人を除いては他人との交流は一切ないラースさえよく知っている有名人だ。
いや、有名より悪名高いかな。
どこかの巨商人なのか、毎回交易所に来てあらゆる物を大量に購入していくシャイロックは、取引相手に首に青筋を立てて怒鳴りつける姿がかなり頻繁な頻度で観察される方だった。
販売者に正常の範疇を外れた不満を吐露し、話にならない要求を押し付けることさえ多く、多くの人に忌避対象とされるのは当然のことだが、そのような彼を一層気まずくする存在がある。
それはまさにシャイロックが率いる3人の部下だ。
(こんなに近くで見るともっと怖いね…)
顔のあちこちを神経質なシワで埋め尽くしているシャイロックの後ろで、無味乾燥な表情を貫きながら正面だけを見つめる3人の狼男ゾンビの威容に圧迫感を感じ、ラースは思わず唾を飲み込んだ。
うわさによると、危険区域を通るためにシャイロックに雇われたという彼らは、頭が一つもないデュラハンであることを勘案しても、図体ではどこにも負けないラースがややみすぼらしいように見えるほど巨体の肉体を誇っていた。
特に一列に立っている3人の中で中央に立っているやつは体も一番大きいうえに、ぎゅっと閉じた口でも隠すことができない牙の鋭さを誇示し、独歩的な威圧感を誇っていた。
おそらく、あれほど自嘲的な悪名の中でシャイロックが巻き込まれる争いが一度も起きなかったのは、彼らの持分もかなり占めただろう。
このように色々な理由で危険な匂いを漂わせるために取引対象どころか簡単なことでも絡まれることさえ敬遠される相手だが、彼が依頼人との約束場所にじっと耐えているこの状況を回避することもできない。
仕方がない。
聞こえないほど弱くため息をつき、ラースは眉間を険悪にしかめているゴブリン·ゾンビにためらいながら近づいて慎重に話しかけた。
「フレット…ドミトリーさん?」
ためらうような口調は内心目の前のゴブリン·ゾンビが何かの錯覚でただここに立っていただけだったらという気持ちだろう。
しかし、期待を裏切るかのように、ゴブリン·ゾンビはラースの方を眺めながらとげのある返事を代わりにした。
「遅い」
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