第166話 聖魔法

【イラスト公開】

いつも拙作をお読みいただき、誠にありがとうございます(*ᴗˬᴗ)⁾⁾


5/17にファンタジア文庫様より発売されます当作品のイラストが公開されました!

特設ページにはカロリーヌや女王様のキャラ紹介、ヒロイン達の水着イラストの一部が見られますので、ぜひご覧になってください(๑˃̵ᴗ˂̵)


https://kakuyomu.jp/users/iwasetaku0613/news/16818093076510627433

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 俺も前線に出るということで、部位欠損してしまった味方の怪我はあとで治療することになる。普通の怪我自体はポーションでも治せてポーションはかなりの量を用意してあるとはいえ、みんなにはこれまで以上に注意してもらわなければならない。


 エルミーの背中に背負われ、護衛としてフェリスとフロラとデジアナに囲まれながらカースドラゴンの変異種へと近付いていく。聖魔法は対象から数メートル先にまでしか効果がないため、ドラゴンにかなり近づかなければならない。


 実際に間近でドラゴンを見るとものすごい大きくて、城壁の上から見るのとはまったく異なる。みんなよくこんな恐ろしい魔物を相手にしていたものだよ……


「ソーマ殿が出る、総員後退! 魔法使いは一斉掃射の準備だ!」


 間隙をぬってドラゴンに近付くと、最前線で指揮を執っているディアーヌ様の号令でドラゴンを相手にしていた騎士や冒険者距離を取る。エルミーの背中におぶさりながら、両手を前に差し出す。


 頼むぞ、効いてくれ!


「ピュリフィケーション!」


「GRU!?」


 俺が聖魔法を唱えると、黒いモヤの瘴気を纏ったドラゴンが激しく白い輝きに包まれていく。


 そしてドラゴンを纏っていた黒いモヤが吹き飛び、先ほどポーションを当てた時は赤黒い色になっていた肌の色がドラゴンの元の肌の色に近い赤色へと変化していった。


 聖魔法を唱えてすぐにドラゴンから距離を取る。


「総員撃てええええ!」


「GRAAA!」


 ディアーヌ様の号令により3度目の魔法による一斉掃射がドラゴンを襲う。先ほどと同様に土煙が舞い上がり、それがゆっくりと晴れていく。


「くそっ! あの野郎、尻尾を犠牲にして防ぎやがった!」


 ディアーヌ様の言う通り、魔法使いが魔法を放った瞬間に赤い肌のドラゴンは身体を横にしつつ、自らの巨大な尻尾を身体の前に差し出した。その結果ドラゴンの尻尾はボロボロになったが、ドラゴン本体はまだ動いている。


 知性が残っているのか、本能によるのかは分からないが、尻尾を犠牲にしてこちらの攻撃を防ぎ切った。


「だがいける! 総員今がチャンスだ!」


「うおおおおお!!」


 だがこれはチャンスでもある。どうやら聖水の入った瓶を投げるよりも俺が直接聖魔法を使った方がはるかに効果は高いようで、カース化の影響である不死化が抑えられ、先ほどよりもダメージが入るようになっている。


 そして聖魔法の効果も数十秒経っても消えていない。


「ソーマ、大丈夫か!」


「うん、大丈夫。でもかなり魔力の消費が激しいみたいだから、そう何回も聖魔法は使えないみたいだ」


 背中越しにエルミーの言葉に反応する。


 確かに聖魔法の効果はかなりあったみたいだけれど、身体中へ一気に疲労感が襲う。これは魔力を使いすぎた時に起こる疲労感だ。これまでにも大きな怪我を何度も治すと多少の疲労感に襲われることはあったが、ここまで大きなものは初めてだ。


 さすがにカース化した巨大なドラゴンだけある。


「GYAAAAA!」


「うわっ!?」


 前衛の味方が一気に攻めようとするが、再びドラゴンが巨大な咆哮を上げる。城壁の上で聞くのとこの距離で聞くのじゃえらい違いだ。耳を塞いでも鼓膜が破けそうになるし、ビリビリとした空気の振動がものすごい。


「うおっ、こっちを向いたぜ!」


「ソーマを狙っている」


 フェリスとフロラの言う通り、ドラゴンの深紅の瞳が俺の方を見つめる。先ほど聖魔法を放ってからすぐに遠くまで離れたのだが、それでも視線は俺を追っている。


 そう、カース化した魔物は聖魔法を使う者を優先的に狙ってくる性質がある。これまでは近くにいた前衛をその巨大な爪や牙で狙っていたドラゴンが、明らかに明確な敵意を持ってこちらに向かってきた。


「だが、いける。やはり先ほどよりも攻撃が通っているぞ!」


「味方の攻撃が効いています!」


 エルミーとデジアナの言う通り、前線で戦ってくれている味方の攻撃が先ほどよりダメージを与えているため、ドラゴンはこちらには進んで来られない。


「くたばれ、トカゲ野郎!」


「これ以上は進ませないよ!」


「GRUAAA!」


 ディアーヌ様とティアさんの大剣と大斧の重い斬撃が同時にドラゴンの右腕へと襲い、ドラゴンの右腕が肘あたりから千切れて宙へと舞った。


「よっしゃあ! ティアのやつもやるじゃねえか!」


「ああ、いけるぞ!」


 よし、このまま押し切れる!


「GYAAAAA!」


 ドラゴンがまたしても巨大な咆哮を上げる。間違いなく効いている。あと少しだ!


「総員退避!」


 止めを刺せると思いきや、なぜか突然城壁の上にいる国王様から退避の命令が出る。もうすぐ倒せそうなのになんでだ!?


「断末魔……いや、違う! 何かしてきやがる、総員退避!」


「っ!?」


 前線で戦っていたディアーヌ様も合わせて退避の指示を出す。


 それと同時に俺の背筋にゾワリとしたものが走る。まずい、何かヤバイ!!


「エルミー、何かしてくる! あっちの方へ走って!」


「っ! 分かった!」


 エルミーに指示を出して味方がいない右の方へ走るように指示を出す。


 これだけドラゴンとは距離があるのに右腕を失ったドラゴンは俺の方をものすごい形相で睨んでくる。間違いなく何かヤバイものが来る!

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