第151話 討伐の遠征
「回復ポーションの数はもう十分なので、ソーマ殿には例のポーションのように聖魔法の力を液体に加えることができないかを試してみてほしいのだが、いかがだろうか?」
「ええ、できるかは分かりませんが、もちろん協力させてもらいますよ」
一応俺もユージャさんと一緒に例のポーションを作ってきた経験がある。ユージャさんがこの場にいないのはかなり心細いが、俺にできる限りの協力はするとしよう。
「もちろん私達も手伝うぞ!」
「まあ、あんま力にはなれねえかもしれねえけれどな」
「多少なら手伝える」
「みんな、ありがとう!」
エルミー達も例のポーションを作っていた時にはいろいろと手伝ってくれていた。俺では気付けないこともあるだろうし、とても頼りになる。
「ソーマ殿、感謝するぞ。そしてエルミー殿、フェリス殿、フロラ殿にも感謝を」
「ソーマ様、皆さま、本当にありがとうございます」
国王様とカロリーヌさんが頭を下げてくる。
今回の件については決して他人ごとではない。なにせ王都でカースドラゴンの変異種を倒せなければ、王都だけでなくアニックの街にまで来る可能性がある。この世界に来てから、アニックの街の人や王都の人達にはとてもお世話になっているからな。できる限り力になるとしよう。
「う~ん、やっぱり難しかったか……」
できる限り協力するとは言ったものの、残念ながら今日は結果が出なかった。
国王様とカロリーヌさんと話をしたあと、王城にある研究室のような場所へ案内された。元からあったというよりは、急遽部屋を改装して臨時の研究室にした感じだったな。
そこにはデーヴァさんもいて、すでにいろいろと浄化魔法による実験や検証を行っていた。俺やエルミー達もデーヴァさんと合流して、ポーションなどの液体に浄化魔法の効果を付与できないかを試してみたのだが、残念ながら目ぼしい結果を得ることができなかった。
現在は王城でお世話になっている部屋へと戻ってきている。
「さすがにそう簡単にうまくいったりはしないだろ」
「ああ、まだ変異種が来るまでに時間もある。それにできれば儲けものだと考えていたほうがいい」
「そもそも回復ポーションがあるだけで、ソーマはとても役に立っている」
まあ、あの回復ポーションを作る際にも結構な時間が掛かったし、俺もそう簡単にできるとは思っていない。みんなの言う通り、できれば儲けものくらいの考えでいた方がいいかもしれない。
とはいえ、それができれば聖魔法を使える人達がカースドラゴンの変異種との戦闘に直接参加しなくても済むようになるので、できる限りは完成させたいところだ。
聖魔法を使用できるジョブは限られており、しかも治療師や教会関係者など、直接戦闘をしないようなジョブの人が多いらしい。戦闘をできる聖魔法の使い手は聖騎士などのかなりの上位ジョブに限られるとのことだ。
それを考えると明日からはもう少し遅くまで頑張っていきたいところだ。
「そうだね、俺のできる範囲内で頑張るとするよ」
「あまり無理はしないでくれよ。明日からは私とフロラはティアと一緒に魔物の討伐を手伝う予定だからな」
みんなと一緒に聖魔法用のポーションの研究をしていた時に一度ティアさんがやってきた。ティアさん達は明日から王都の周囲にいるカースドラゴンの変異種によって増えて凶暴化した魔物を排除する手伝いをするらしい。
増えて凶暴化した魔物達を排除しておかないと、カースドラゴンの変異種が実際に近付いてきた時に周りの魔物を排除するだけで、かなりの戦力を消耗してしまうからな。
ティアさん達は冒険者として、泊りがけで少し遠くまで遠征する部隊を手伝うようだ。さすがに安全な王城の中にいる俺をエルミー達全員が護衛する必要はないので、フェリスだけを俺の護衛として残して、エルミーとフロラは王都付近にいる凶暴化した魔物達の討伐を手伝う予定となっている。
カースドラゴンの変異種との戦いはすでに始まっているということだ。
「エルミーとフロラの方こそ、無理だけはしないでね」
むしろ危険性があるのは凶暴化した魔物と戦う2人のほうである。
「ソーマが用意してくれたポーションがあるからな。たとえ怪我を負ったとしても問題ない」
「この辺りの魔物はまだそれほど影響を受けていないから大丈夫」
俺が回復魔法をかけたポーションはすでに討伐部隊へと支給されている。さらに付近の街からポーションの材料を集めているので、明日以降も少しずつ俺が回復魔法をかけたポーションの蓄えも増えていく。
そしてカースドラゴンの変異種からまだ離れているこの辺りは魔物達もそこまで影響を受けていない。一番危険なのはよりカースドラゴンの変異種の近くにいる凶暴化した魔物を間引くティアさん達の部隊か。
ティアさん達もAランク冒険者だし、その辺りは大丈夫だとは思うが、無事に戻って来ることを祈ろう。
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